西洋梨と杜若(かきつばた)

西洋梨と「かきつばた図」のキャンディボックス

教室でのデモ制作。今年もぼちぼち西洋梨のシーズンになってきた。何度も何度も描いているモチーフだが、飽きるということは(少なくともわたしには)ない。毎回それなりの課題が現れ、いつも自分なりの新しい答えを求めていくからだろうか。

それでも、毎回ちょっとずつモチーフのバリエーションなり、表現法のチャレンジなりの変化が欲しいのは、自分もまた見る側でもあるから。今回は普段はパソコンの前にある、折り紙のキャンディボックスをアクセントに置いてみた。色合いも良く、適当な技術的課題もあり、楽しいモチーフになった。ただ、少し細かいことをいうと、これが何であるか絵からは分からない。「キャンディボックス」という名前も、特にそういう用途があるわけでもなく、ようするにただの紙の箱をわたしがそう呼んだだけ。紙製かどうかも絵を眺めただけでは判別できない。技術的課題というのはそのことを指しているのだが、どうやらそれはクリアできていないようだ。

この六角形の箱は、俳句の仲間のAさんに句会の時に頂いたもの。Aさんは折り紙をよくされ、施設などで指導することもあると聞いたような気がする。折り方を見た時、これはオランダ・ダールマンズのワッフルボックスと同じだと思い出した。中身よりこの箱(の折り方)に惹かれて田舎へのお土産に買ったことが何度かある(ただし、日本で)。紙には尾形光琳の「国宝・杜若(かきつばた)図屛風」のプリント。蓋つきになっていて手が込んでいる。

水彩画(特に小品は)紙の白を残すのが大事だとわたしは感じている。白は(黒も)すべての色を引き立たせる、極上のスパイスだと思う(油絵ではキャンバスの白を残しても全くその効果がないのは不思議なこと)。ただ、時間が経って紙が黄ばんでくるとその魔法が解けてしまう。この絵のように白の部分が広い絵では、額に入れるガラス、アクリル板には紫外線カットのものがおすすめです。