価値観の分断

「新生№5」2008  テンペラ、210×546(cm) そういうこどだったのか・・
「脱皮」2007 テンペラ、91×182(cm) 

今日で8月も終わり。なんだか暑いだけだったなーと思っているうちに、追い打ちで「9月も暑いってよ」と気象庁が発表しています。市役所から今日も熱中症予防のメールが発信されています。関東ではどこもそんな状況でしょうが、局地的には鳥取、新潟、山形、秋田などの日本海側を中心に、今日も厳しい猛暑日が予想されています。

福島原発からの汚染水海洋排出、大阪万博、カジノ推進、世界でもウクライナ戦争は言うまでもなく、中国対アメリカの,、主義とお金を巡る争い、地球温暖化、開発と環境とパンデミックの諸問題をめぐって鋭く対立しています。結局は価値観の対立ですが、それがさらに細かく分断し、そのそれぞれがまた壁のように峻別され、協調して乗り越える努力の代わりに、簡単に武力が行使されてしまいます。

そこまで対外的な事柄でなく、ごく身近なことにも価値観の分断があり、それぞれ気が重くなるほど強い表現で相手を攻撃しています。たとえば“X” (前の“ツイッター”)などを見ても、相手側の意見の背景や真意を理解しようとする気持などまったく示されないまま、暴言のオンパレードです。短い文章だから余計そうなるところもあると思いますが(それは言語力の衰退という新たな問題を孕みますが)、何より発信ボタンを押するまでに、もう一度(できるだけ)冷静に自分の気持ちを振り返ってみる、という時間を持てないことがその理由ではないでしょうか。皮肉なことに、腕時計を持った時から、現代人は“時間を失ってしまった” のです。

「価値観」とは、自分の中での「価値の順位」のことでもあります。人によってその順位に違いがあること自体は、たぶん誰もが容認できるでしょう。けれど、たとえば人を傷つけることはよくない、なとということは価値観以前の、人類史的な文化遺産だろうと思っています。それに近い部分に分断が起きてくると、価値観どころか “人間観” そのものが揺らいでしまいます。
 個人の価値観を大事にする、ということは時代の流れであり、ある意味で歴史の必然でもあると思いますが、現状での、価値観が裂けていくかのような様相は、これまでの“人間” が人間でなくなるというか、爬虫類や両生類のように新しいものへ脱皮する、そういう変化(進化?)の時なのかもしれないと思っています。そういう想いを、一度絵にしてみたことがあります。

寸描

8/27(日)アップしました

陽光のなか、車列がノロノロと動いては止まり、止まってはまた動く。車のいたるところから強い反射光がわたしの眼を射る。テレビなどでこちら側に向けて銃を撃っているシーンとそっくりだ。目の前を移動する車のかたちに合わせ、銃口の位置は移動するが、ずっと眼を射続けていることには変わりがない。

白い車が多い。塗料が安く、耐久性がいいからだ。色褪せしても目立たない。橋上の車列を横断して、川沿いに老夫婦らしき二人連れが駅の方向に向かって歩いていく。白っぽい幅広の帽子と白いキャップを被り、二人とも少し小さめのバッグを持っている。どこかお出かけするのだろう。女性は薄い青地の短い袖のワンピースに、花柄だろうか、ところどころ淡い赤が動く。男性は薄い地模様のある半袖シャツに白の半ズボン。ややずんぐりで背は高くないが、庭仕事や家事などはこまめにできそうなタイプに見える。少し歩幅狭く、彼女の1メートルほど前をせかせかと歩いていく。10秒ほどで家の向こうに消えて行った。

プーチンの戦争2

Apple  F4 テンペラ

ロシアの民間軍事会社ワグナーの総帥、プリゴジン氏が死亡した、というニュースが、昨日8/24世界を駆け巡りました。遅かれ早かれ、いずれは….と誰もが思っていたのでしょう、驚きはどこにも見られなかったようです。

そして、多くの人が「あの時、モスクワまで一気に入っていれば、殆ど無抵抗でプーチンを拘束できたかもしれないのに」とも思ったのではないでしょうか。そうすれば、本心では戦争に行きたくない(たぶん)ロシアの若者たちには熱狂的に支持されて、来年の大統領選挙で圧勝できた可能性もなくはなかったのに、土壇場で躊躇したばかりに真逆の結果になった、そうも思った人も少なからずいたでしょう。古代ローマの将軍、シーザーがルビコン川を渡ったときほどの、勇気も準備も足りなかったようです。

プリゴジンが乗っていたプライベートジェットをミサイルで撃ち落としたようですが、だいぶ前、当時中国ナンバー2だった林彪(りん・ぴょう)が権力闘争に敗れ、軍用機で国外脱出しようとしたところ、領空から出る寸前、ミサイルで撃ち落とされたことを思い出しました。これから(すでに?)おそらく関係者が一斉に粛清されるのでしょう。独裁とはこういうことですが、命までは奪わなくても、国会があっても無視、なんでも閣議決定で進めてしまうやり方、マスコミを金と権力で思い通りにするやり方も “見えにくい” 独裁体制のかたちではないかと思います。

ロシアではプーチン氏への支持率は依然高いままだそうです。独裁の意味を知り、有意な行動ができる若い人たちの多くはすでに国外脱出(60万人以上とも!)しているようですから、プーチンが(脳以外の)健康であるかぎり、この戦争は残念ながら終わる気配を見出せません。