大晦日 / Last day of the year

一つしかない村の診療所

今日は大晦日。母はどうやら2018の元旦は迎えられそうだ。もしかすると年末まで持たないかも、という緊急連絡で飛んできた甲斐は、この日を迎えただけでもあるのかも知れない。

ベッドの上の母は、時々死んでいる、と思うほど長い時間、口を開けたままで無呼吸になる。骨と皮ばかりになって眠りと覚醒のあいだをさ迷う。見ている私にできることは、ゴム手袋を着け、口の中に脱脂綿と指を突っ込んで、乾き、固まりかける唾液を拭いとるくらい。話はほとんどできない。

死にゆく人はこうやって、(自分にとって)生きるとはどういうことなのか、考えさせてくれる。たくさんの人の手を煩わせること、それ自体が教育。無駄な死、無意味な死というのは無いのかもしれない。

 

風土 / Climate

久しぶりに雪かきをした。何年ぶりだろうか。私は無理せず、玄関前だけを。気温がマイナスになっていたので雪は軽く、あまり腰の負担にはならなかった。

病院の行き帰り、両側には雪をまとった林が延々と続く。雪の林を見ていると、本当に美しい。中学生の頃、冬はほとんど毎日のように一人で林の中を歩き回っていたのが懐かしい。今でもカンジキをつけて、ひょいと入って行きたい気持ちになる。

街にいると厚着しても寒く感じるのに、こちらにいると雪の中にいても、なぜかさほど寒くは感じない。自分にとってとても自然な空気・気温のように感じる。自分の中の、ある感覚が外と勝手に交信を始めるような、そんな気がする。

ブレーキランプが見えない

昨日は北海道が猛吹雪で、追突事故など報道されていた。雪のない東京、埼玉などではきっとタイヤのスリップによる追突だと考えるかもしれない。雪国ではほぼ全ての車がスタッドレスタイヤをつけていて、その性能は(雪質にもよるが)かなりのものだ。まず、スリップはしない。

怖いのは、車の後ろに巻き上がる雪と吹き付ける雪とで、後続車に示すブレーキランプがすっかり覆われてしまうこと。後続車は吹雪と先行車の巻き上げる雪との狭間で、やっと先行車の輪郭を捉えながら走っている。吹雪が激しいとセンサーも効かず、つまり自動衝突防止装置も働かない。先行車が急にブレーキをかけるような事態になると、追突事故になってしまう。

ヘッドライトも最近のものはLEDになっている。電球そのものの発熱量が小さいので、雪がこびりつく。雪国でないと、なかなかこんなことは思いつかない。