テンペラ画の制作を動画にするつもり

テンペラ画の制作(2日目終了時)


小さな絵を、100号と同じアイデア、同じタイトルで描いてみる。

大きい絵をそのまま縮小するのは構図上も技術上も良くない。小さいサイズの絵には、そのサイズだけが持つメリットを発揮してもらわないといけない。とりあえず、こんな調子で始めてみた。これから先へ進めながら、それなりに改変してみようと思う。

描きながら動画に撮影している。なので、なかなか進まないだけでなく、誰か別の人がかいているような気分が半分くらいある。今のところはとりあえず、順調。撮影は蛍光灯を消し忘れたり、相変わらずのヘボー式。

下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる?

動画製作中の1カット。こういう練習も無駄なのだろうか

下手くそな猟師でも、何度も狩りを繰り返せば、そのうちまぐれでもまともな獲物にありつくという、「経験」を勧める「たとえ」。

そうなんですよねー。絵もたくさん描いているうちには「オッ!」というのができることがある。「けれど、それはまぐれ」。いやいや、そう考えてはいけません。声を大にして言いますが、「まぐれは実力!!!」なんです。

 アメリカの野球で大活躍の大谷選手。2022シーズンでは43本のホームランを打って、一時はホームラン・キングをつかめるかというところにいました。今年はどうでしょうね。来年、再来年はどうでしょうか。仮に今シーズン、40本行かなかったとしても、わたしは彼の実力が落ちたとは全く思いません。半分以下の20本だとしても評価は変わりません。「打てた」ことが凄いんです。それを毎年なんて、期待する方が無理なんです。野球だけ例に出して恐縮ですが、プロ野球で4割打てるバッターはいません。2割以下でもプロはプロです。
 何を言いたいんだっけ?―そうそう、まずは数撃て、経験を積め、ってことですよね。そう、経験しか自分を伸ばしてくれるものはないんですよね。知識もいったん「体験化」しないと、絵に描いた餅のまま。もっとも、「200枚描け」と言ったら、ずらずらと200枚描いて自分を固定してしまい、あとは何ひとつ聞き入れないという人がいました。わたしにとっても想像外で、おおいに反省しました。ライオンのハンティングも9割以上失敗するそうです。わたしたちは失敗しても「今日のご飯」のある「人間」です。まずは数撃っていきましょう。

ところが、ここでもとりあげた、最近話題のチャットGPTという言語処理機能の発展が急加速して、「経験など役に立たないのではないか」どころか、まったくの初心者が「失敗無しに」ベテラン以上の成果をあげることが常識化し始めた感がある。「数撃ちゃあたる」と言ったばかりなのに、こちらは「一発必中」。それも数秒で。「コツコツと努力」などと言う言葉がアホらしく感じられてしまう。なんだか「人生の半分以上が数秒の価値しかなかった」と言われているような気がして、まことに辛いものがある。表題に?をつけざるを得ないゆえんである。

ゼラニウムの構図

「ゼラニウムの構図」習作 水彩 F8

「構図」という言葉は美術の用語ではなく、一般用語だ。けれど、「構図ってなんですか?」と訊かれると、なかなかパッと一言では答えられない。パッと説明できないものはよくわかっていない証拠。「構成」の方がずっと説明しやすい。

「構図」の方が抽象的、かつ「文学的」だ。だから、題名にはよく使われる。赤の構図、青の構図といえばすぐ小説などを思い浮かべるし、貧困の構図とか○○金脈の構図などと言えば、ノンフィクションやジャーナリズムを想像する。この場合の「構図」は、かなりムード的なもので、ほとんど具体性がない。絵画での「構図」ならもっと具体性がありそうなものだが、こうした流れを絵画も引きずっていて、せいぜい大雑把に数本の線を引いて、「対角線構図」だの「三角形構図」だのと役に立たないことを口走っているに過ぎない。

「構図」には色の話など全然出てこない。絵画なら、もっぱら画面上でのモチーフの配置と、一歩引いてみた時の線的な効果だけに留まる。その点、「構成」となれば、色の対比、かたちの対比はもちろん、視覚的なあらゆるものが具体的、詳細に、論理的に吟味、検証されうる形式で記述される。絵画では「構成」という語の方がふさわしい。

けれど「ゼラニウムの構成」と「ゼラニウムの構図」では、すくなくともこの絵では「ゼラニウムの構図」の方がいい、と思う。先に述べた「文学性」と重なるところもあるが、「構図」には作者の主観性が滲みでているように感じるから。この絵では、モノの配置や板の並び方などわざと微妙な角度に「構成」している(水平線は一本もない!)。けれど、そういう論理的なものを越えて、画面というものに対する「わたしの主観・好み」といったものが漂っている。それを意図するならば、「構成」という言葉ではどうも包括しきれないような気がする。だから「ゼラニウムの構図」なのである。