恵方巻き

「恵方巻き」はここ10年くらいだろうか、急速に社会に浸透し、おせちやクリスマス・ケーキ、バレンタインチョコと並ぶほどの季節定番商品になったようだ。

それが一方で、大量の食材廃棄をもたらしていると新聞に載っていた。

こういう数字には控えめな政府広報でさえ、日本だけで年間1900万トンの食料が捨てられており、これは7000万人が1年間食べていける量だという。そのうち売れ残り、賞味期限に近いなど、まだちゃんと食べられるのに捨てられる、いわゆる食品ロスは500〜900万トン。日本は食材の多くを輸入しているが、これらの数字を見ると輸入量のほぼ半分を捨てていることになるという。私たちの「もったいない精神」はどこへ行ってしまったのだろうか。

美味しいものは心を豊かにする。それは確かだ。けれど、それを独り占めするのではなく、出来るだけ多くの人と共有する方が、もっと豊かな文化を生み出すことにつながるだろう。食品ロスをさまざまな施設や介助の必要な人々に循環する動きが、一部ではあるがいわゆる先進国の中には出てきている。日本も今のうちに、個人や団体の善意に頼るだけではなく、その意を生かしたシステムをきちんとつくることを課題にすべきではないか。食べ物の確保はどんな人の心にもゆとりを持たせる。病気になっても、失業しても、ちゃんとした食事が出来る社会は、きっと豊かな想像力を私たちに還元してくれるに違いない。