いま「ポテトチップス」?

Calbee Craft ポテトチップス (紙に鉛筆)

先月末、水彩クラスで「ポテトチップス」をモチーフにしてみた(その周辺のことはすでにこのブログに書いた)。これまでの「伝統絵画的モチーフ」からいきなりポテトチップスでは、生徒さんはまごつくだろうし、わたしにしても、これまでのモチーフで描いてきた絵とポテトチップスとの関係を、定義・確認しておく必要があるだろうと思ったので、実施の前に(iPadで)自分でいくつか描いてみた。そうして、世の中はモチーフだらけ、というか、モチーフの中に住んでいることにあらためて気がついた。

旅先で珍しい食べ物とかがあったりすると、今なら多くの人がインスタグラムなどで“すぐ”(不特定多数の人々と)共有することができる。が、ほんの10年前でも、そのようなかたちで(せいぜい)友人、知人と共有するまでにはかなりのタイムラグがあった。それには写真を現像、プリントして友人に郵送するなどしか方法がなかったような気がする。

共有するにはまず写真か文章(手紙)が必要だった。絵を描ける人ならそれにもう一つ「スケッチ」という武器がある。けれど、多くの人にとって、写真やスケッチの90%以上は記録のためであったと思う。だから、スケッチも絵の一つであるという認識はあっても、頭のどこかに「それは(本格的な)絵」のための、あくまでメモのような次元をこえるものではないというハードルを設けていた。
―「ポテトチップス」などは、そういう意味での記録的興味の対象ですらなかった。そこらじゅうにあふれ過ぎていて、あえて“記録する価値”が見出せなかったからである。それに「安っぽく」見えた。ただ、いかにも人工的、現代的な商品という外観は、ポップアートを持ち出すまでもなく、自分の中でも「これらを抵抗なく描いたら、そこから(自分の)新しい絵が始まるかもしれない」とは思っていた。9月に「青いカモメ展」が終わり、生徒さんの中にも、何か新しいことをやってみたいという気持ちが湧いてきていたところだったようで、「今がポテトチップスだ」―ちょうどいいタイミングで始める事ができたのだった。

水彩、油絵にも「いきなりポテトチップス」。そんなわけで鉛筆デッサンにもポテトチップスである(描き方は極めて古典的、オーソドックスだが、これは生徒さんの希望である)。現在の「高校の美術部」とかなら「え~っ、今ごろ~!?もう終わってるよ!」だろうけど。―それはともかく、実際に描いてみると案外に面白い。(本格的な)絵にならないどころか、これこそ「絵になる(すべき)」素材ではないか、とも感じてきた。