水彩+パステル −2

「小さなランプのある静物」F6 水彩+パステル 21Dec’19

「水彩+パステル」では彩度的にパステルが目立ちがちになる。しかも凸凹のテクスチャーも目を引きやすい。この絵は水彩をベースに表現したいので、パステルの出番はできるだけ抑えてみた。

水彩とパステルでは、組成上パステルの方が彩度が高い。つまり鮮やかで目立ちやすい。だからこの2つの組み合わせなら、目立つところ、明るいところへパステルを使う方が効果的だと言える(水彩は暗い部分、広い部分を受け持つことになる)。けれどご用心。目立ち過ぎはご法度。ほどほどが大切でござるよ。

10点ほど続けて、表現としては水彩単独より目を惹きやすいのは解った。でも、なんだかちょっと飽きてきた。水彩+パステルというより、この描写的な表現法に飽きてきたようだ。テーブル面や影の描写に「もうたくさん」と描いてあるのを感じますか?

水彩+パステル

「冬・午後」2019 F10 水彩・パステル

水彩+パステルという組み合わせで描くのが、ごく最近の試み。水彩とパステルの組み合わせ自体はごく一般的な方法なのに、自分の中では作例が少なかった。改めて始めてみると、両技法のいいとこ取りができるだけでなく、水彩、パステルどちらのハードルも低くなることがわかってきた。これはとても有用な発見だ。ぜひ多くの人に勧めたい。

ハードルが低くなるという意味は、例えば上の絵では、人物の顔を水彩で描くとき、パステルを使うことを前提にすると顔の色は赤黒い面でグルグルっと塗ってしまえばそれで十分。水彩だけで描くようなデリケートなテクニックなど不要。後はコンテで強い輪郭線、水彩で塗られた面より明るい色だけをパステルで、光を描くつもりで書けばよい。パステルは暗い色が苦手だが、そこを水彩で下塗りをしてもらうので非常に楽に描ける。パステルの色数もたくさん揃えずに済み、一石二鳥。

問題はパステルの定着力くらいかな。定着液でしっかり止めようとすると、パステルの鮮やかな色が沈んでしまう。ギリギリ最小限に留めておく方がよい。まあ、粉末状の絵具は落ちるものだと考え、あまり永久性にこだわらない方が楽しくできそうだ。

Apple-2

「Apple」 2019 F6  Oil on canvas

私の「Apple」の最初の登場は1980年代後半だから、少なくともすでに30年以上、中断しつつ続いている。今また新たにシリーズ化しそうな感じだが、ここらへんで言っておきたいのは、 「Apple=リンゴ」 と変換して欲しくないということ。

私はほぼ一年中、毎夕食後にリンゴを食べる。「りんご・リンゴ」は私にとって「実物」であって、単なるイメージではない。また、私はリンゴのことをふだん「Apple」とは呼ばない。だから、作品としての「Apple」 は私にとって、一つのかたちとしてのイメージ(抽象)であって、食べたりする実物の対象を描写しようとするものではない。「Apple」は「Apple」という、リンゴとは全く別物、次元の違うものだ、と考えて欲しいのである。

そう考えてもらえれば、この絵はすんなりと見たままに理解できる(はず)。全体としてはリンゴのようなかたちをしているが、よく見るとムキムキマンの男が、(マントのようでもあり、羽のようでもある「翼を持って」)飛んでいる絵が見えてくるかもしれない。それが「Apple」である。

実は、このような仕掛けの絵は世界中にずっと古い時代からあり、私もそれらを参考に、これまで何度も様々な試みを重ねてきた。けれど最近の「Apple」は(私自身の制作の中では)これまでのものとは明らかに違う意識がある。この先どうなっていくか、自分自身でも少し楽しみでもある。