数字の薄い「自粛要請」

「非常事態宣言」が1ヶ月近く延びて、5月末までとなった。4日の安倍首相の説明では、前回までの自粛効果があったのかなかったのか、そしてこの延長でどこまでが期待でき、そのそれぞれの段階に応じて、どういう対策を考えているのか、などが全然見えてこなかった。補正予算も、脳天気な、コロナが終わった後の観光刺激策などに、喫緊の医療費をカバーするお金の数倍〜数十倍のお金を計上するなど、目の前のことが本当に見えているのか疑わしい政策判断だ。

460億円以上という、莫大な予算を使っての「各世帯に布マスク2枚」。3人家族はどうするの?という話は早くからあったが、「とにかく何かやりゃあいいんでしょ」と言わんばかりの不毛な愚策。どれだけの国民が望んだか知らないが、10万円という金額算定の根拠と、その政策的意味との整合性の無さ。政府もバカだが、それを歓迎する国民もマスコミもバカだというしかない。金額云々ではなく、論理で考えられないという、脳の貧困の方がコロナよりずっと深刻だ。

コロナが明らかにしているのは、医療体制の脆弱だとか、そういう問題を越えて、いかに私たちがものを考えない国民か、ということなのではないか。「非常事態宣言が延長になりました」、ああそうですか、欲しがりません、コロナに勝つまでは。一億玉砕火の玉だ。5月5日現在東京都の感染者数4654人、人口13,951,781人(2020/3/13現在)。単純に計算して、感染率0.000333。ざっといえば1万人に3人(埼玉県は1万人に1人)。しかも退院した人も入れて、だ。東京都の死者数141人(5/5現在)を、やはり人口で割ってみると10万人に1人になる。ちなみに全国で最も交通事故死者の率が小さいのが東京都だが、2019年では約10万人に1人。自殺死亡率は15.7 (人口10万人あたり)と比べて、説得力ある数字なのか。今年度の自殺者は確実に増えるに違いない。

その一人に自分がなったら、それは大変だ。PCR検査をしないからだ、警戒したからその数字で済んでいる、などという言い方にも、ほんの少しだが一理はある。でも、それでも2ヶ月も半経済封鎖しなくてはならないという数字なのか?痛みを感じているのは、外出自粛を声高に言う人々とは別な人々なのではないか?感染予防そのものがいけないなどというのではない。ただ、このやり方そのものが「一世帯2枚」のマスクに象徴されているのではないか、と思う。