優先順位-1

「ざくろと眼鏡」水彩 F4

優先順位をつける必要がある人の多くは若く忙しい人だ。現役引退するとかして、ヒマを手にできた人は優先順位なんてつける必要ない。やりたいことを思いつく順番にやっていけばいいし、それこそ “特権” だと思う。ヒマこそ人を幸せな気分にし、それぞれの人生に微細な味わいをつけるプラットフォームだ。むろん忙しい人もそうではあるけれど、建築なら土台や壁、設備と、部屋のインテリア、調度の違い、車で言えば基本性能とマニアックなこだわりのような違いが、忙しい人と暇な人との間にはあるような気がする。ヒマな人も大事だよ、という意味ですが。

優先順位とは、「その時点での重要度の順番」ということだから、「その時点」が過ぎれば、優先順位が一気に変わるのはごく当たり前のこと。デッドラインに一番差し迫った事柄から重要度が高まりやすい。差し迫っているのに順位が高くならないなら、それは直ちにリストから削除される。急ぐ必要ない(急ぐべきではない)か、不要だってことだからね。

自由業、たとえば芸術家はそういうものから外れた世界だと思っている人もいるかもね。けれど、音楽家が勝手に一人で演奏してもそれで生きていくことはできない。聴衆を集め、何がしかのお金が得られるようにならなけば、サッサと排除されてしまう。
 芸術家にも優先順位はありますよ。ヒマそうに見えてもそれほど暇じゃあない。細かなデッドラインがいくつも積み重なっている点では「忙しいひと」と変わらない。ただ、デッドラインをいくつクリアしても決して一区切りとはならず、明日もまた自らデッドラインを引いていくのが、自虐的といえば自虐的なのが違いかな(笑)。