絵画―「明るさ」をつくる

薔薇を包む(水彩) F6

「明るい花を描く」には、明るい色で塗ればいいのでしょうか。それとも隣に暗い色を置けばいいのでしょうか。―正解は記事の最後にあります。

「明るい・暗い」は相対的な「感じ方」の問題です。同じ花でも、周囲が暗ければ明るく見え、周囲が明るければ花は暗く見えます。絶対的な明度を示すときは、例えば「マンセル色彩体系の中での3.5」とか6.0というふうに示します。物差しがあれば測れるのです。

「相対的」という意味は、「二つをくっつければ判る」ということです。離れていたり、あいだに別の色がはいったりすると「相対的」の意味が失われてしまいます。A、B、C、Dの4つが隙間なくくっつけば、1~4番までの序列をつけることができます。その差も解ります。「くっつける」ことが大切なのです。
 でも、現実の絵画では、離れた位置での比較をする必要が頻繁に出てきます。写真を撮って、それをパソコン上で比較するだけなら、まだしも簡単ですが、現実の制作中ではそうもいきません。それぞれのパーツが周囲との「相対的な」差別化」を生みだしてしまっているからです。そのうえ、そのことを理解している人でも「 99.9%」 の人はそれを「無視」します。“面倒くさい”からです(わたし自身も数年前までそうでしたが)。けれど、それはそれは自分の絵が“絵画”であることを否定しかねません(理由の詳細は省略します)。

 同じ色(明るさ)なのに明るく見えたり、暗く見えたりするのは一種の錯覚です。錯覚は脳の「正常な」働きが引き起こします(「正常」です。ご安心)。絵画という芸術表現は、眼から脳を刺激し、ある種の錯覚を意図的に引き起こすことで成立するジャンルですが、「どのように(脳を)刺激をすれば、どのような錯覚・衝動・行動を生むか」は、今や世界的な最先端の研究テーマだと言っていいでしょう。その簡単な参考例をちょろちょろっと(インターネットで)見るだけでも、意外に応用できるようになるものです。

※正解は、「隣に暗い色を置く」です。