水彩は小さめの作品に向く

ポットのある静物(部分) 水彩 F6
ポットのある静物(部分) 水彩 F6

私自身にとって水彩は一つの新しい可能性だ。これまで水彩の難しさだと思って敬遠してきたことが、実はことごとくそれこそが可能性だと思えるようになってきた。

たとえばもっとも難しいのが、水彩絵の具の濃度調整。常に最適の濃度を作り出すことは至難の業だが、逆に言えばそこに個人の感覚の閃きのようなものが反映されやすい。失敗と成功の紙一重の不安定な状況が最初から最後まで続くのが水彩だが、それが自分の感性を開く可能性と表裏一体だと感じてきた。

それにストロークの個人差。油絵のタッチに相当するが、ぼかし、滲み、跳ね、かすれなど油絵より数段繊細で、かつよく見れば大胆簡潔。それが水彩の魅力の一つだと次第に分かってきた。

けれどそれらは大画面では見えてこない。理由は絵の具の層が薄いことが一つ。薄いうえにカラフルだからでもある。でも、それは水彩の欠点ではない。画面を小さくすれば、それらのすべてが見えてくるのだから、小さくすればことは足りるのである。水彩は小画面にもっとも適したメディアだと思う。