技法を併用する

          「5つのプラム」  紙、アクリル、テンペラ

前回の「水彩+テンペラ」を「アクリル+テンペラ」に展開してみた。乾燥時間のズレを解消するためだ。プラムの最終的な赤はテンペラで描き、それ以外はアクリル絵の具。プラムの赤だけはアクリル絵の具では満足できなかった。

油絵を描く人たちが、アクリル絵の具について述べる不満の第一は「瘠せ」。描いたときはふっくらしていても、乾くにつれて水分が抜け、見た目にも物理的にも「薄くなる」現象を言う。当然だが、アクリルに限らず、「水性絵の具」全般に「瘠せ」は起きることになる。
 けれど、水彩絵の具でも墨絵でも、描いている時からすでに薄いので、乾燥後とのギャップはない(水彩では色のギャップは大きい)。それに引きかえ、アクリル絵の具は盛り上げることが可能な絵の具である。見た目の盛り上げに満足したあとの「瘠せ」にがっかりさせられる、そのギャップが大きいからだろう。

油絵具の乾燥は水性絵の具と違い、水分を飛ばすのではなく、「酸化」という化学反応によるものだ。絵の具の中の分子が空気中の酸素と結合して硬化するので、酸素分子がくっついたぶん「太る」のである。「太る」までいかなくても、「瘠せない」ことで乾燥後の最終結果が容易に想像できる。ちなみに色のギャップも、水彩絵の具に比べればずっと小さいことが油絵具の大きな利点だ。

テンペラ(ここでは全卵のこと)は水分を飛ばして乾く乾燥と、化学反応による乾燥との2ウェイ方式。さらに油絵具ほど油分がないので酸化による黒ずみも極めて少ない。顔料(色の素)の純度が高いので鮮やか、かつ乾燥後は耐久性もある。ただ、毎回下地処理が必要だし、絵の具を手作りするという面倒くささがある。
 技法を併用するということは、いいとこどりをしたいと言う意味。できれば表現の幅が広がるし、その組み合わせ方に悩むのも面白い。

テンペラ技法を併用する

                 「Russia 2026」習作   水彩、テンペラ、アクリル

教室でのデモ制作終了。今回のデモの目的は「水彩の補助的な使い方としてのテンペラ技法を体験する」。事前に分かっていたことではあるが、水彩絵の具とテンペラ絵の具との乾燥時間の違いが、ある程度慣れたひとにとっても、想定以上に大きな障害になることがわかった。用具を含め、「補助的」というにはかなり高度なテクニックが必要だった。

それにもかかわらず、それなりにある程度の結果まで漕ぎつけ得たのは素晴らしい。さすが何年もやってきただけのことはある。この技法の押しつけはしないが、ときどき忘れない程度にやってみれば、コツも分って、だんだん望みのイメージに近くなってくるはずです。

わたし自身はテンペラに慣れているので、今回のデモでやったことをもっと広げていくつもり。いわゆる「水彩画」とはひと味違うことをやってみたい。

林道の橋を描く-2

前回の「林道の橋」をアクリル絵の具であらたに描き直してみた。写真はなぜか実際とずいぶん色が違って見えるが、まあ、こんな感じ。アクリルで描くと油彩の良さをかえって想ってしまうのは、まだアクリルが使い慣れていないせいかもしれない。。

絵の具に厚みがあるのは手応え感があって、それなりに楽しい。わりと簡単に直せるから、水彩ほどの緊張感は不要だし。それかどうかは分からないが、同じモチーフ、まあ、ほぼ同構図ではあるけれど、イメージはまったく別の絵になった。それが言いたくて描いたようなものだけど。

もう一枚、こんどはもうちょっと抽象化して描いてみようと思う。