
コロナ禍。東京都が3日連続で新たな感染者5000人以上(全国では25000人以上。症状があるなど自ら申し出た人だけで)、東京都だけで累積30万人を越えたという。一都三県だけでなく、大阪をはじめ、全国でも軒並み感染者数最高を更新し続けている。神奈川県知事などは直接その言葉こそ出さないが、事実上のロックダウンを政府に求めている。統計医療が示した想定のうち、「最悪のケース」が現在進行中である。
感染者数増加で、「すでに医療崩壊状態だ」とかなりの数の医療関係者が、警鐘どころか非常ベルを推しているなか、当の東京都知事はすましたものだ。柔らかい口調で「災害級の感染増」「帰省は諦めて」「買い物に出ることも控えて」「他人事でなく自分事と考えて」。「感染したら死ぬかもよ」とばかり、言葉はお願いのようでいて、中身は脅しのような言い方だ。
そのくせパラリンピックはやるという。オリンピックをやるべきではないと提言したコロナ対策の分科会会長を暗に皮肉りながら、「安心安全なオリンピックを開催できたという経験を生かして」「児童、生徒には(中略)貴重な機会だから、ぜひ(会場で直接)観戦させたい」。ならば一般市民も「(安心安全だった)オリンピック期間中と同様」気を付けながら外出すればいいのではないか。IOCのバッハ会長が銀座へお買い物に出た時も「不要不急の判断は個人がすること」と五輪担当相は言った。ならば「帰省」も「他人事と考えず」などと言われる筋合いなどない。自分で判断すればいいと大臣も知事も言うのだから、「不要不急」云々など余計なお世話である。第一、都内への通勤は全く問題にしないが、近場のショッピングに出かける事さえ控えて、という論理は矛盾している。人命より経済優先、自分都合のパフォーマンス優先と言われるのも当然だろう。
何を訊かれても、「ワクチン接種が進めば」と馬鹿の一つ覚えだったどこかの首相も、緊急事態宣言の拡大地域名を並べただけで、あとは雲隠れ状態。大見得を切った、頼みの綱のワクチンそのものが不足する事態を招くなど、危機管理能力ゼロだと思ったが、そもそも危機感自体が無いのだろう。ずっと頭にあるのは、目前に迫った自民党総裁選と衆議院選挙のことだけか。首相の頭にはパラリンピックなど、もうどうでもいい事柄に違いない。選手には気の毒というしかないが、どう考えても、この状況下であえて開催する意義は見いだせない。国民も、賛成も反対もなく、「何を言ったって、どうせやるんだろ」と、ほぼ無関心という心の隙間を小池氏に突かれてしまっている。そのあたり、政治家としては首相より数段うわてなようだ。