筋肉疲労症候群

スモモ沢林道入口。ここから8kmほどの緩い林道。道はそこで行き止まり。

8月27日夜、たまたまホテルの部屋でテレビをつけた。興味ありそうな番組はなかったので、早めに寝るために比較的静かそうなものを選んだだけ。「プロフェッショナル 仕事の流儀」(NHK)。

「女性特有の病気がある」。「性差」を踏まえて対応する必要があるという、当たり前のようだがこれまで医療がまともに対応できていなかった分野があり、それを開拓しようという静風荘病院の女医・天野恵子氏の「プロフェッショナル 」の物語だった。

 そこで取り上げられた女性特有の病気が「筋肉疲労症候群」。初めはのんびり見ていたが、病気の詳細が少しずつ語られ始めるとのめり込んだ。「これが母の病気の正体だったのではないか」。現在も原因不明、従って治療法も未確立。子どもから老年まで、突然発症し、重症化すると寝たきりになり、死に至ることもある。どこの病院へ行っても「どこにも悪いところは見つかりません」「気にし過ぎ」。

母は60代頃から急に無気力になり、疲れた、疲れたと言ってはすぐ横になり、立っているのが辛いと言った。毎日のように原因不明の頭痛に悩み、異様な疲れと頭痛のために病院通いが多くなった。けれどどの病院でも悪いところはないとの診断。私を含め家族は次第に「本人の意識しないところで、何か精神的な無気力がおきているに違いない」と思うようになった。そしてその無気力の原因の一つは、彼女の長男である私の生き方にも関わっているのではないかと、私は密かに疑っていた。

母が亡くなったのは今年の5月30日深夜。いろいろな思いを込めた今年のお盆が終わり、今の自宅に帰るその前の夜、偶然に見たこの番組の不思議とも思えるめぐり合わせ。もしそうだとしたら「筋肉疲労症候群」がいかに母を苦しめていたのか、そして30年にも亘るその苦しさに、私たちはなんと無知、無関心だったのかを考えないわけにはいかなかった。