飛ぶ男

飛ぶ男 F8 2013
飛ぶ男 F8 2013

絵の装いは古典的だが「飛ぶ男」は実は近未来人であり、絵のように「飛べない」ことなど百も承知である。人間がどれほど腕力を鍛えようと、人力で羽ばたき、飛ぶことが不可能であることは、現代なら子供でも知っている科学的な事実。この絵のような翼ではムササビのように滑空することさえ難しいと、彼「飛ぶ男」は考えている。そして、あろうことか作者であるこの私に向かって「俺はお前ほど時代錯誤の人間じゃない。お前なんかより、もう少し現代的・知的な人間として俺を紹介してくれよ」と注文してくるのである。

しかし「飛ぶ男」は、空を飛びたいという単純な願望の表現ではないという点で、作者である私の意見としぶしぶ一致する。もともと彼は、この古典的なシチュエーション自体に不満である。それを彼に納得させるのはなかなか骨なのだが、それは作者である私以外に適任者がいない。「これは一つの新しい感情・直感の形式であり、それが現実に存在するという意味でリアリティがあるのだ」と、難しい言葉で彼を煙に巻くつもりだ。「感情?ケッ!」と唾を吐かれそうな気もするが。