私たちが選んだ国

クレマチスと水差し

いま日本は年間30万人ずつ人口が減っているそうだ。週に6000人。人口6万人の小都市なら10週間、3ヶ月足らずで消えることになる。しかも減少の速度は増しつつある。これはもう戦争レベルの非常事態ではないか。

ニュースを聴くと(当然?)人手不足、らしい。なのに、働く人の時給は上がらず、正社員になる道は広がらず、老後の不安はどんどん増していく。外国人を「移民」ではなく、「実習生」として受け入れようとしている。選挙権など、国の方向を決めるような権利は与えず、生活保護など負担になりそうな時はサッサと追い出せるようにしておこうという、姑息で、人権軽視の姿勢が見え見えだ。それが私たちが選んだ政治家たちの考えだ。

税金の使途は自分たちファミリーの都合いいように改ざんされ、追求には記憶喪失と黒塗りで応え、税金を使っているくせに自分の手柄のように威張る。圧力が北朝鮮でなく国民に向き、年寄になったら金がかかるから早く死ねと顔に書いてあるというのに、政権の支持率は下がらない。これはもう宗教だと言うしかない。私たちはどうやら筋金入りの馬鹿であるらしい。

馬鹿なら馬鹿らしく、馬鹿なことをやって楽しんで死ぬのも良さそうなものだが、人と違うことをとことん怖れる臆病者でもある。美しい国、おもてなしの国とは、実はのっぺりと脳みそのシワもない、裏アリ表ナシの国なのだった。

月光仮面は誰でしょう

アンスリウムと水差しの習作

月光仮面は誰でしょう。街中に溢れている、あの月光仮面たち。

サングラスに白い帽子、白マスクに手の指先さえ見せぬ白づくめ。オートバイ姿はあまり見かけぬが、自転車や車を運転する月光仮面はそこらじゅうにいる。時には手に提げたビニール袋から大根を見せ、時には幼児にねだられながらアイスを買っていたりする。月光仮面は誰でしょう。

防犯カメラは街中にあるが、もし月光仮面が悪さをしても、悪い月光仮面と正義の月光仮面とを区別するのは難しいかも知れない。

もちろん、月光仮面は悪さを隠すためにマスクしているはずなどない。悪には強いが、日光や砂嵐には弱いのだ。10年近く同じ職場で働きながら、目の前の月光仮面は誰でしょうと、今も呟いている人がいた。

美的価値感

    宇佐美圭司(参考作品)

東京大学の学生食堂(安田講堂地下)にあった、宇佐美圭司の大作(4×4m)を生協が捨ててしまった(廃棄処分)ということで、各方面から呆れられている。

この大作は、東大生協創立30周年記念ということで、生協自らが宇佐美氏に制作を依頼したものらしい。

大学構内の施設改修で食堂も移転することになり、作品をどうするかが当然議題の一つになった。しかし、結局のところ所有者である、大学生協側が面倒くさくなってポイした、ということだ。移転や保存の方法について専門家に相談するでもなく、(密かに)廃棄したというやり方に彼らの美的価値観が表れている。「つまらない絵だ」と思っていた、ということだ。

しかも、「あの絵はどうした?」という学生、教職員らからの質問に、いい加減なウソを答えていたことも明らかになった。なんだかモリカケを巡る国会での政府答弁そっくりだなあと、その点でだけ、さすが東大だと納得した。