怖い世の中だ

浮かぶ男 F120 2013
浮かぶ男 F120 2013

連日のように中国艦船が日本の領海に侵入を繰り返すニュースが流れる。その度に中国は悪者と言う「共通認識」が広がっていく(もちろん中国でもそれは同じようである)。けれど日本の工場、デパートなどが中国で壊されたようなことが、逆に日本で起こらないことを祈りたい。

最近アメリカの民主主義もかなり危ない気がする。戦後70年近く経つが、日本の民主主義は、ずっとアメリカだけを父のように慕い、真似をし続けてきたと思う。子どもも成長したら、パパの悪い所は真似してはいけないのに。

私たちの民主主義は江戸時代以前のまま。なぜか子どものまま。立派なパパの背中が大き過ぎるのだろうか。

 

 

 

「ばか!」

飛ぶ男 P20 2013
飛ぶ男 P20 2013

上手にボタンをかけることができない男の子が1人。

その子より幼い子でもちゃんとできたから、それは男の子が幼すぎたからではない。

男の子は初めて自分でかけたボタンをかけ違った。大人のしぐさを正確に真似たつもりだったが、そして十分に動作を呑み込んでからボタンをかけてみたのだったが、ボタンとボタンの穴はひとつずつずれていた。

彼は急いで全てのボタンをはずし、やり直した。しかし再びボタンはひとつずつずれた。彼は意地になり、何度もかけなおしたが、その度にボタンは意地悪くずれるのだった。

いや、実は何度かきちんと合ったこともある。けれど、彼は偶然にできたことに納得がいかず、必ずぴったり合うための「秘密」を知ろうとした。

それは彼にとって、大変な難問であった。どうして他の子はいつもちゃんとできるのだろう(彼にはそう思われた)と思ったが、その子に直接「どうやるの?」と聞くことはなかった。

「こうやるんだよ」と自慢げにやって見せられるだけでは、秘密は明かされないと彼は考えた。自分ができることと、人に説明できることとは別だ、と彼は本能的に悟っていた。それに、そんなすごい秘密を簡単に教えてくれるはずはない、と大人っぽく先回りして考えていた。

やがて、男の子は指から血を流しながらすべてのボタンを引きちぎり、地面に投げつけて何度も何度も踏みつけた。ボタンのせいではないと解ってはいたが。

1人の女の子がそれを見ていた。

その子はいつも自分でちゃんとボタンがかけられたが、なぜ自分がうまくできるのかなど、考えたことも無い。そんなの、彼女にとって当たり前のことにすぎなかったから。

女の子には、男の子が異様なほどボタン遊びに熱中しているように見えた。そして彼がついにボタンを踏みつけた時、まるで自分が踏みつけられたように感じて、思わず叫んでしまった。

「ばか!」                                2013/8/1