「ITバス」に乗れないわたし

「クロワッサン」をアトリエで制作・撮影中

2ヶ月ぶりのビデオ撮影。毎週1回は撮影するのが目標だが、いまは全然できていない。時間が無いのではなく、「能力」のほう。それも特殊な能力を要求されるわけではなく、たいていは経験を重ねれば誰でもできることなのだから、単にサボっているとしか言いようがない。

アトリエが狭いことがサボりの遠因。「片づけ」という事前のひと手間が必要で、この作業のために意欲がドドッとそがれてしまう。回数が間遠になると準備作業がスムーズに流れなくなり、カメラやほかの機材に表示される数値の意味も忘れてしまうので、歯車が二重三重に嚙み合わなくなってしまう。撮影機材を出しっぱなしにしておければいいのだが、我が家のスペースは中途半端でとても使いづらい。

2019年から、コロナ感染による緊急事態宣言などで空白の時間ができた。最低でも1~2年はそんな状態が続き、その後の世界観にも必ず変化が起きると思ったので、以前から必要性を感じていたCGによる制作や映像制作の練習を、この機会に本気でやってみることにした。撮影機材にも自分なりに投資し、時間を割いて勉強、練習を始めた―ところまではよかった。

そこまでは良かったが、突きつけられたのは想像していたより遥かに自分がアナログに凝り固まった人間だという現実。自分ではもう少し柔軟性がある気がしていたが、始めてみるとガチガチで、すっかり「絶望の海の縁にたたずむ流浪の人」。けれどもう後戻りはできないし、戻ればわたしの絵画人生もそれで終わる。――のん気に歩いているうちに後から来たITバスに追い越されてしまった。バスはどんどん遠ざかる。しょうがない。バスの軌跡をたどりながらてくてく歩く。息子は「そんなに先じゃないよ、次のバス停は」と励ましてくれるが、ちゃんと跡を追えているかさえもう定かではない。ITの世界では、続けているうちに急に翼ができて飛べるようになる人もいるらしい。それを希望に、明日もあれこれいじって行きまする。