不幸な予測

         制作中  ミクストメディア F100

関東でも平野部までも、2日続けて雪が降った。雪国のそれと違い、こちらの雪は湿っていているうえ、空気中の汚れをたくさん閉じ込めていて汚いからなるべく触らない。
 ブログにはなるべく政治のことは書かないようにしているが、時々は自分自身の記憶のために書こうと思う時がある。

昨日3/4、アメリカのトランプ大統領がウクライナへの軍事支援を一時停止したというニュースが世界を駆け巡った。ある程度想定されてはいたが、トランプ氏に投票した共和党支持者たちの中にさえ、それは行き過ぎだという人々も少なからずいるように見えた。

これまでのアメリカの政治的な立場を180°変えるような、ロシア寄りの姿勢に危機感を感じたヨーロッパ各国は、懸命にアメリカを引き止めようとしているようだ。先日のゼレンスキー、ウクライナ大統領との口論が引き金になったかのように報道されているが、トランプ氏のプーチン好きはずっと以前から危惧されていたから、軍事支援の停止は大統領就任後の既定の行動だと考えた方が自然だと思う。“口論” は単なる口実に過ぎないという人も少なくない。
 トランプ氏にとって、政治などは商売のための道具に過ぎないだろうから、いくらゼレンスキー氏が頭を下げて謝罪しようと(そもそも彼にそこまでの非礼があったかどうか。非礼というならむしろ招待した側のバンス氏の方ではなかろうか。一国の大統領を非難して面前で恥をかかせた。トランプ氏自身がそうしたならまだしも、バンス氏はトランプ氏の随人の立場で、彼を差し置いたことでトランプ氏にも恥をかかせたことになる)、さらに居丈高になって、もっと厳しい要求を突きつけられることにもなりかねない。

ともかく、世界一位と2位の軍事大国が手を結ぶとなれば、それに対抗しようとすれば全ヨーロッパが団結するだけでも足りないのは明らか。「第3次大戦を弄ぼうとしている」と、トランプ氏はゼレンスキー氏を罵ったが、そんなこと今のウクライナ、それも一国だけでできるはずもない。可能なのはどちらか、子どもでもわかる。
 自分自身の記憶のためにこの記事を書いて置く。すべて、そうならないことを祈る。

ゼレンスキーは偉い

          「モデルスケッチ」  水彩 F10

2/28、ゼレンスキー氏とトランプ氏がワシントン、ホワイトハウスで会談した。結果は “口論” になり、レアメタルを巡る交渉での調印は棚上げになった、と報じられている。

久しぶりにリーダーたちの本音がぶつかり合う映像を見た気がする。ウクライナの人々は多く英語が堪能だが、ゼレンスキー氏もほとんど通訳を必要としない英語力も立派。会談は物別れに終わったようだが、彼が(自分のためでなく、当然だが)ウクライナの立場を譲らず、主張する姿はウクライナ国民からの高い支持を得たという。いま彼以外世界の誰が、トランプ氏に媚びずに堂々と自分の意見を言えるだろうか。

トランプ氏を見る限り、アメリカの為なのか、自分の為なのかはっきりしないところがある。プーチン氏に至っては自分個人の野望のためとしか言いようがない。世界のリーダーと言われる人の中には、多かれ少なかれ、国益に自らの利益を上乗せしている感が見え隠れしないでもない。しかしゼレンスキー氏には個人的な利益感は全く感じない(豪勢な屋敷を買ったとか、ロシア発のプロパガンダはウクライナ国内でも結構あるらしいが)。彼はこの会談で、少なくともウクライナ人の記憶に残る人となったに違いない。

しかし現実は厳しい。既にトランプ氏はウクライナへの武器輸送を、この会談以前からストップしているという情報があるが、戦争は現在も続いている。まだまだ続くだろう。アメリカの武器と経済支援がなくなったら、ヨーロッパの支援だけで戦い続けることは難しいかも知れない。トランプ氏は何度も、ロシアへのウクライナの譲歩を口にしてきた(ロシアからの譲歩は求めずに)。ゼレンスキー氏にも「譲歩」の一語は常に頭にあったはずだが、トランプ氏に媚びてウクライナ国民を辱めることはしたくなかったということだろう。政治には素人と言われたゼレンスキー氏だったが、そのことがかえってリーダーはかくあるべし、という姿勢を示すことになっている。

ドサクサまぎれ

       「青い石を掴め」2025  ミクストメディア

アメリカのトランプ大統領が、自分が就任したら「24時間で(ウクライナ戦争を)終わらせる」、と半分ジョークのつもりで言った(はずだ)。そんなのを真に受ける人など世界のどこにもいない、と思っていたが、それをメディアが書き立てた(もちろん本人はそれを別の意味で意識していただろうが)。それを多少は気にしたか、6ヶ月くらい、と言い直したから、さらにマスコミが「発言が後退」と騒ぎたてた。トランプ氏は「この野郎」とでも、メディアに対して思ったのだろう。

もともと大好きな(彼は「独裁者」が好きなようだ)プーチン大統領と二人だけでウクライナ戦争の(一時)停戦を実現させようとしているようだ。「6ヶ月以内を目標に」。「口だけでなく、実際にやった」とメディアに鼻を明かして見せたいのだろう。もともと彼はメディアの人間でもあったから。

けれど、それだけでなく、彼は基本は商人である。その商人根性まる出しの行動が、ウクライナに「レアアース」をよこせ、というドサクサ紛れの要求だ。いわゆる「ミンスク合意」には頬かむり、まるで100%善意であるかのような支援を装ったままでの要求は、ほとんど「火事場泥棒」的だとわたしには思われる。
 一方、このバカげた戦争を始めた張本人であるプーチン氏には何一つ要求しないどころか、独裁者好きらしい「ご丁重な」扱い。一方のゼレンスキー氏に対しては、最初から「優秀なセールスマン」などと、上から目線である。

 そういう行動がいかにアメリカ自身を貶めているか、彼の掲げる Make America Great Again (MAGA)にも矛盾しているのは多くの人々の指摘するとおりである。西欧側が反発するのは当然(チェコやハンガリーのように、反発に反発する国もあるが)だが、それにもそれぞれ “別腹” があって、結局は「自分たちさえよければあとはどうでもいい」という、本来の欲望が見え隠れする。もうこれ以上書く気を無くしそうだが、そういう意味では、ストレートに「モノをよこせ」というアメリカ、ロシアの方が、ケダモノらしく正直なようにも見える。