日の温みが恋しい

「日差し」 水彩

AIが登場して、世界のビジネス環境はここ数年でさらに大きく変わると言われている。わたしは “世間” の端っこで、中心からかなり遠いところで生きているが、それでもその風を感じるくらいだから、社会のど真ん中で生活している多くの人々には(なかなか直接目に見えるかたちにはならなくても)相当大きな影響があるのは間違いない。

極端なことをいうと、「生きているのが嫌になる」という人が世界人口の三分の一とか、半分くらいになる、そんな世界になるような気がしている。

もちろん、企業やある人々(ビジネスと言ったけれど、一般の会社員と言うような意味ではなく、ほんの一握りの経営者かそれに近い人々、そのような人々)にとってはなくてはならないツールだろうし、便利、快適、環境、あらゆる意味で「神器」となるだろう。
 けれどほとんどの人にとっては、「便利になったなあ」とぬくぬくしているうちに、真綿で首を締められるように、ゆっくり?「不要なヒト」に分別されていく、そんな世界がとうとう来てしまったのではないか。個人だけでなく、企業、業種、国単位でも、そのような “淘汰” はもっとストレートに眼に見えてくるはずだ。どんなに「必死に」頑張っても、そんなことに何の価値もない厳しい世界。それが80億のヒトを抱える世界。
 パンドラの箱は開いてしまった、と前にもAIのことを書いたけれど、その状況はさらに加速していると感じる。幸も不幸も含めて、AI出現以前に戻ることはもうない。

日本人の平均寿命が80歳を超えたのはだいぶ前だ。だんだんそんな歳に近づき、そんな世界を目の当たりにする前にどうやら寿命を終えられそうなのは、幸せと思うべきなのかもしれない。まだ年賀状が机の上に乗っているうちなのに、そんなことを考えてしまう。

新年の青

「冬の漁港」のための習作

教室でのデモ制作。正月らしい、旗で満艦飾の漁船でも描きたいと探してみたが、ちょうどいい資料写真が見つからなかった。白い雪と一部の赤で新年の気分になって頂けると有難いです。海の絵では何と言っても波の表現がすべて、と言ってもいいほど重要でしょう。

というわけで、さざ波の練習をしました。あたりまえですが遠くの波は小さく、手前の波は大きい。小さく描くにも限界がある。現実や写真では、見えてはいても、描けるかどうかはまた全然別。だからできれば描かずに済む方法を考える。描いた方がいいなら、どういう描き方が適当か、紙との相性も含めて、いちど描いてみる。

練習を重ねればうまくなるのは確かだが、絵というのは上手ければいいというものではない。そこが絵というものの深さへの入口。練習ではいつもうまくいっているのに、本番で失敗、というのは普通にあること。しかも、その「失敗」の方が、芸術的に?良かったりするのはスポーツなどと違うところ。―じゃあ、練習してもしなくてもいいんじゃない?確かに。そうかもしれんし、そうでないかも知れん。

それにしても、この船の用途は何だろう。ウインチがあるところを見ると、網を巻き揚げる船だろうか。わたしの記憶にはないかたちだ。

夜景と透明水彩

夜景を描いてみる
「夜景ー花屋の前で」 水彩

「夜景」は透明水彩向きの画題ではないんだなー、とあらためて思う。透明水彩という技法は、薄~い絵の具層を透過した光が紙の白さを反射して、ふたたびその層を透過して眼に入る仕組みを原理にしたものだから、紙を黒々と塗ることは本来的に矛盾することになる。

ちなみに油絵具では、透明層と不透明な物質層があり、透過光と物質反射(表面反射)という、二つの視覚への通り道がある。それが油絵の重厚感と深みを生む(もっとも、現代の絵画ではこの「透明層」が嫌われていますが)。ついでに言うと、同じ水彩画といっても「不透明」いわゆるガッシュで描けば、油絵と基本的に近い考え方になります。ただし、油絵具のような透明層が無いので、それはそれでまた別の問題が出てきます。

その矛盾を和らげるには、暗い色はなるべく薄く塗るほうがいいことになる。だから、紙の白さを残すんですね。残った紙の白さとの対比によって、より暗く「感じさせる」のが、透明水彩という技法です。見たままではなく、効果を考えて描かなくてはならない。そういう意味で、油絵よりよっぽど高度で、また技術的にも難しいんです。
 少し脱線しますが、子どもには、水彩より油絵を先に親しませた方がいいというのはわたしの主張でもありますが、日本はそういう意味では「(自分も含め)周りを汚さない」「匂いがある」「荷物が重い」等々、芸術という点からみれば本質的でないことが優先順位が高い。いろいろ問題はあるが、簡単な方から始めるのがいい、というのが基本です。

話が逸れましたが、そういうことで、「夜景」は普通に思っている以上に難しいんです。なんだか弁解に聞こえますが、だからチャレンジしたくもなるんですよね。
※2024.7月11日に「夜の花屋前」というタイトルで、同じモチーフで別バージョンの絵を描いています。どうぞ比べてみてください。