Covid-19 を忘れないうちに

「夕陽の権現堂桜堤」 5/Apr/2020
「有効期限書き換え」BBC-Newsから

ずっと自粛で気が滅入る。夕方、自転車で権現堂桜堤まで行ってみた。密集、密室、密接の「三蜜」になるはずはないので、「不要不急」だが運動を兼ねて。思っていたより次から次へと人が来る。皆、気晴らしが欲しいんだなと思った。今日は一日中気温が上がらず寒かったが、日中はもう少し人出もあったのではないかな。

新型コロナ・ウィルス(Covid-19) のニュース以外は「その他」だ。東京をロックダウンするかどうか(きっとすると思うが)を、まるでカウントダウンするかのように、東京の感染者数ばかりが強調される。地域では防災放送で外出自粛など様々な要求がなされるが、その割には日本政府や自治体など官公庁の危機感は、各国に比べて極めてゆるい、ように見える。

英国BBCの記事の中に、マスクの「有効期限」が書き換えられているというニュースがあった。有効期限を示すステッカーが、2009の上に2013、その上に2019、さらにその上に2021などと何枚も上に貼り重ねられていたというもので、NHS(英国の保健省)がそれ(中身の安全性?)を確認したということだが、医療現場では(安全性が)信用できないという声が上がっているとあった。

写真を見ると日本の会社が輸出したもののように見える。緊急事態につけ込んだものでなければいいが。スペインなどでは感染対策用のガウンが不足し、ビニールのごみ袋を代用したり、レジ袋をすっぽり頭から被って医療に当たっているものなど、悲惨な写真が海外ニュースには溢れている。日本ではすでに「コロナの後」の経済対策やオリンピックのことに比重が移っているようで、大きな違和感がある。この未曾有の事態を、できるだけ個人的な記憶、記録としても残しておきたいと思う。

文化のねじが壊れている

「 Apple 3 colored 」 2020 tempera

オランダの小さな美術館が、借りていたゴッホの絵を盗まれた、というニュース。コロナ禍のため、政府の要請により臨時休館中だったらしい。

「こんな時に」と憤るより、私はこの窃盗犯に拍手を送りたい気分だ。コロナで気が滅入っているこんな時期に、せめて美術館を開館して気持ちを癒す方向に工夫を凝らすのではなく、単純に休館するという発想自体にも一矢を報いている気がする。大規模イベントはほぼ全て自粛なのに、オリンピックだけは来年の開催日も決まったという大きな矛盾。アスリートのためなどと言っているが、本音はオリンピックにかけたお金の回収と、それを起爆剤に商売に弾みをつけたい経済界からの強い要請が最優先なのは誰でも知っている。そういうときに、盗んだ絵をたった一人で、ワクワクしながら間近に覗き込んでいる姿を想像すると、犯人の方がずっと高尚な人間のような気がしてくる。

フリーランスの音楽家・演奏家、舞台俳優など、さらに各種カルチャー教室のインストラクターなどが、ライブやイベントのキャンセル等で生活が成り立たなくなっている。文化国家としてこんな状況をほっといていいのか、という議論が起こっている。従来の失業対策の間口を広げてこれに対応したい、という生返事が行政からある。けれど実態は「フリーランス」という言葉の意味さえよく解っていない。「ライブ」という語には「感染源」という訳語しか、彼らには当てはまらないらしい。有名人しか知らない彼らに、その有名人がどんな道を辿ってそこまで到達したのかを、想像する能力は完全に欠けているらしい。

フリーランスで働く人々の、一時的な生活困窮のバックアップに失業対策費を援用するというのに、その間は「ハローワークなどへ通い、できるだけ仕事を見つけなさい。これはそこまでの援助です」という趣旨の説明だ。馬鹿か、としか言いようがない。「これで生活を安定させ、良い時期になるまで一生懸命作曲や練習に励みなさい」というのが趣旨ではないか?どこかに勤めなさい?練習は?画家が個展を1週間やって、売り上げが100万円あるとする。1週間で100万円なら、年間55週間あるから5000万円くらい稼げるでしょうと、平然と言う。いつ絵を描くと思っているのだろうか。想像力のかけらもない。絵を盗むのはもちろん良くない。けれど、こんな馬鹿と話すよりは、犯人との方がきっと深い話ができるはずだ。

コロナ休み

「 Green apple 」 2020

現在、世界のおよそ3分の一にあたる人々に、移動の制限がされているらしい。Covid-19が猛威をふるうヨーロッパでも、犬を散歩させる場合でも自宅から10m以内という厳しい制限のあるところもあれば、庭や公園で友人たちと食事を楽しんだり、スポーツなど身体接触があっても(全体として気をつければ)OKというレベルの国、地域もある。みんながみんなパニックになっているわけではない。

外出制限、テレワーク(自宅でのパソコンによる仕事)、休校、レストランなど生活必需品の販売以外の商店の閉鎖、三人とか五人以上の集会禁止、ほぼあらゆるイベントの中止、美術館・博物館・図書館・劇場などの文化施設の休館…など、要するに強制的に自宅で休みを取れということ。普通のときと違うのは、いつ休みが終わるのかわからないということ。そして、長引きそうだということ。

アメリカ・エール大学のインターネット通信講座の受講者が50万人増えたという。この機会に、新しい資格を取るための勉強を始めたなどというポジティブなニュースが、スマホやパソコンの画面を駆け巡る。「不安がっていても仕方がない。お前も前向きに何かためになることをやれ(文句をいうヒマがあったら)」と圧力をかけられているような気がして、かえってストレスだ。ポジティブも結構だが、ただ体を休めるだけだって悪いことじゃないだろう。

海上で遭難し、ゴムボートなどで漂流する時、早く死ぬ人は体力の消耗より、先が見えないことのストレスによる方が多い、という話をどこかで聞いたことがある。だいぶ昔のことだから、今もそれが事実なのかはわからない。でも、先の見えないのが大きなストレスになることは確かだ。気を紛らす術を知っている方が絶対にいい。図書館から100冊くらい借りておけばよかったが(実際は10冊までしか借りられないが)、真っ先に休館されたのは残念だった。