Moon capsule

Moon-capsule(part) f6 mixed-medium 2011

不味いタイトルだが、良いのが想いつかなかった。カプセルの中はヨット(帆は省略されているので少々分かりにくいが)。カプセルに空気でも詰めて、月まで風に乗って行こうか、という気分?

最近旅に出ていない。旅に出ないと、脳みそも体の記憶細胞(そんなのが体に在るかは甚だ疑問ながら、あるような気もする)も眠ってしまうように感じる。脳や、そういう細胞が、「やばいぞ!外に出て風を浴びろ」とささやくのを感じながら、ずっと怠けてきた。

今月末、久しぶりに栃木にスケッチに行くことにした。水彩講座に来ている人の発案で、私もそれに乗ることにした。「風を浴びる」という自然感は無いが、ともかくスケッチブックを手にてくてく歩けばそれでよい。集合場所や時間などボードに書いたままのお知らせを見て、参加していいですか?という人がいるから、もしかすると50人近い大集団になるかも知れない。

でも、てんでんばらばらに歩き、所々でかたまり、マイペースでいいのだから、100人参加したって構わないでしょう。参加者の人数も、顔ぶれも全然把握しない。当日任せ。旅行社主催の企画旅行ではないのだから、それでいい。ちょっとはぐれるリスクがあるが、そのくらいはある方がいいかも。知らない土地で暗くなるまでスケッチし、宿へ帰る道も分からず、通りかかる人も無く、どうしようと不安になりかかったこともある。雪の中で放牧の馬たちに囲まれ、ここで蹴っ飛ばされたらちょっとマズイかなと感じた時もある。そんな小さな非日常体験が、あとになって記憶に残る旅の面白さではないかな。    2011/6/16

絵を描く理由

White rose (part) f8 watorcolor 2011/6/8

3月11日以来、ほぼ1ヵ月ごとに大きなショックに襲われ続けています。大津波の被災者に較べたら・・と思ってはみるものの、続けさまに起こる衝撃は私自身にとってはこれまで経験したことのないほど厳しいものばかり。

いろいろ対応策を考えてみるものの、今のところ焦りと苛立ちの中で、なす術もなく日を送っています。時間がなにか解決してくれるわけではありませんが、何も手に付かないというところです。

大震災の衝撃はとても絵など描く気持ちにさせてくれなかった。今は自分自身が精神的に安定するためにも描かなければいけないと思うものの、頭も体もやっとついていくという感じです。

でも、描けばたとえ一時的にでもほっとするのは確か。頭が動き始め、体もほぐれてくるのを感じます。私にとって絵は自分自身より有り難いような気がします。何とか描き続けて、絵に捧げられるような絵を描きたいものだと思っています。   2011/6/8

アトリエの友

アンスリウムなど  f6 watercolor 2011/6/4

アトリエの友とは、アトリエの必需品のこと。画材以外の、たとえば制作の前に必ずお線香をあげる人がいれば、それのこと。私の師(彫刻家)はそうだった。もちろん蚊取り線香ではないよ。非常にいい香りの(白檀という香木を原料にしたもの)、長さ30センチはある線香をたて、自分への誓いをつぶやき、確認してから毎日の制作に入っていた。燃え尽きるまで2時間以上はかかったと思う。私も一時真似をして、それより1ランク下の線香を立ててから制作したことがある。とてもいい香りで確かに落ち着き、集中力が増すような気はしたが、お金が続かなかった。毎日1本となるとね。その頃は筆もほぼ毎日1本擦り切れ、年間300本の筆を消費していたから、そちらのお金が優先だったし。・・・今よりずっと頑張っていたなあと思いだすと、ちょっと悔しい。

今はデッキチェアがアトリエの友だ。最近は睡眠時間が滅茶苦茶になってしまい、夜・昼関係なく、いつ眠くなるかわからなくなってしまった。運転中に急激に眠くなり、ぶつかりそうになったことも何度か。夜も眠くなるから寝るというのでなく、寝ないとまずいから寝るという感じ。制作中突然眠くなる。ほんの少し時間を措くと、もう眠ることはできないので時を逃さず急いで眠る。折りたたみのデッキチェアとアイマスクが今は必需品。二か月前は考えもしなかったが。

S氏という画家がいる。顔だらけのユニークな画風で有名だが、この人のアトリエの真ん中には何故か「島」がある。床を海に見立てると、二段ほどの崖を経て上が平らな、二畳ほどの広さの台地状の島に見える。眠くなればすぐ横になるための設備だという。

ある美術雑誌に掲載された、この島に寝転んでいるS氏の写真を見て大笑いした。画家のアトリエとは想像もできない、まるで阿片窟(見たことはない。想像で)に横たわる中毒患者そのままの異様な感じの写真だった。お客とはこの2畳ばかりの島で向き合ってお茶を飲む。男同士ではあまり居心地の良くない島だった。  2011/6/4