失敗作を眺める

「夕焼け(習作)」  水彩 F6

失敗作です。既にいちど失敗して絵の具を流した上に、もう一度描いてみたものです。想像していたより、紙への絵の具の染みこみが強く、失敗確定後もうまく洗い流せなかったので、「背景」の練習用にしてみました。画面上の白い枠が、ここで言う「背景」です。

ふつう、風景画には「背景」などありませんよね。それに背景をつけるとはどういうことでしょうか。たとえばこの風景をガラス越しに覗いているとします。ガラスの表面には光が反射したり、自分が映ったりして、風景が見にくくなります。そういう状態は人をイライラさせます。そして、いわば「視覚的に妨害」された部分を想像で補って、スッキリしようとするでしょう。そうすることで、無理やり、見る人の頭の中に、作者の描こうとする絵を一緒に描かせようという、仕掛け(のつもり)なんです。

「背景」という言葉がしっくりしないかもしれません。実際、わたし自身にとってもとても坐りの悪い語なんです。とりあえず、その「邪魔者」効果で風景を逆説的に目立たせる、という意味でこの語を使っているのですが、もっと適当ないい語があったらお教えください。
 今のところ、「背景つき」の風景画はまだ何枚かしか試作していないので、どう発展できるかなどはまだ未知数です。しょせん背景ですから、根本的なものではありませんが、ちょっとしたアクセント程度の可能性なら大いにあると思います。静物や人物画になると、その比重はさらに大きくなって、研究の価値が出てきますね、きっと。

失敗のもう一つは、本題の夕焼けがうまく描けないこと。グラデーションがうまくできないんです。油絵などに比べると水彩画のグラデーションは数段難しいものです。グラデーションは水彩画の最も基本的な技術ですが、それが結局一番難しい。鉛筆は誰でも使えますが、魅力ある線を一本引けるようになるまでが大変なのと似ていますね。紙と自分との相性もイマイチ合わせられませんでしたねー。4,5枚描いてみましたが、それらしい手ごたえはまだ。もう数枚はこのモチーフで練習してみます。

晨春会’24展 はじまる

開場直前の様子

晨春会展が昨日から始まりました。23日(日)まで。良い会場になりました。期間が短いので、どうぞお見逃しなく。昨日はあいにくの雨でしたが、開場前から何人もの方がついでに見に来て(失礼)下さいました。ありがとうございます。

午後からは雨にも負けず、大勢の人が見に来てくれました。来場者の方々とゆっくりお話しができたので良かったです。

埼玉県展講評会

昨日6月9日(土)、開催中の埼玉県展洋画部門の作品講評会があったので、会場の北浦和、県立近代美術館へ行ってきました。その時間はやはり普段より人が多く、熱心な出品者が多く集まっていたと思います。

講評を聞きたい人のほとんどはベテランで、おもにどうやったら入選の上、つまり受賞できるか、そのヒントを得たい、ということのようです。おそらく彼(女)らの大部分はどこかの公募団体、または絵画教室などに所属、通っているなどして、その方法論についても既に十分な知識を持っているように感じました。

ここ数年の流れを見て、わたしならこうする、と感じたアイデアをひとつ。自分がそうしてきたことでもありますが、2点を出品するという単純な作戦です。最近は、どうせ1点しか入選しないのだから1点しか描かないという人が多いようですが、1点ではどうしても「まずは入選」という安全策を採りがちです。2点なら、1点はやや安全策でも、2点目で大きな冒険をすることができます。賞を狙うのに、「安全作」では厳しい。審査員は皆、ある程度冒険的な作品を望んでいるんですから、それに応えなければ賞の候補に挙がらないのです。すぐできることだと思いますがどうでしょうか?