シルバーポイント

「貝がらと小瓶」 シルバーポイント

シルバーポイントとは「銀筆」のこと。といっても一般の人にはたぶん分からない、と思う。純銀を、それより硬いものに擦りつけると、削れてそこに付着する。それが酸化して黒ずみ、鉛筆に似た黒さになる。先端を鉛筆の芯のように加工した銀の棒を使い、自然な化学変化を利用して絵を描くこと、道具、作品をまとめてシルバーポイントと呼んでいる。
 なーんだ、鉛筆の代わりか、ではない。銀は高価なうえ、酸化にも時間がかかる。鉛筆(黒鉛)のように安価、簡単、便利には使えないのである。そのうえ、「下地」という面倒なひと手間が必ず必要だ。逆に言えば、「鉛筆」が文明の道具としていかに優れた発明であったかも実感する(現代ではそれすら不要になりつつあるけれど)。

酸化して黒ずむのは銀に限らない。鉄もアルミも、他にも酸化する金属はいっぱいある。それらを使った描画(材)を総称してメタルポイントといい、それはそれとして使用されているらしい(アルミホイルを丸めて擦れば絵が描けるってことですが)。けれど、画材としてシルバーポイントだけが特別に人気があるのは、なんと言っても「銀自体の持つ気品」ゆえでしょう。腐っても鯛、“錆びても銀”なのだ(喩えが不適切ですか?)。ちなみに「金筆」は存在しないはずです、よね?

写真の絵は制作後まだ日数が経っていないうえ、風が通らない状態にあったので酸化が進んでいない。つまり、まだ“ナマ”な状態にある。酸化したあとが楽しみですね。慌ただしい現代、こんな超スローな制作自体が贅沢な時間なのではないでしょうか。

県展へ行ってきた

「カモメのように(イカロス)」 テンペラ

北浦和の近代美術館へ「埼玉県展」を観に行ってきた。忙しくて?行く余裕がないが、最低限1回は見ておかなければならない。日にちを考えると今日しかなかった。腰が痛く出かけたくなかったうえ、暦の上では仏滅で嫌だったが、雨に降られなかっただけでも幸いだった。

鑑賞しながらいろいろ考えた。まず、絵のレベルが下がっているのではないか、とも感じた。壁が低くなって入選しやすくなっていることと、関係があるのかどうか。人口動態に比例して出品者の高齢化とともに発想が平板で古臭くなっているのか等々。99歳の出品者などが頑張っていることは知っているし、それはそれで立派だと思うけれど、心躍るという意味では、高校生の絵だけが面白く見えた。中高年、負けずにもう少し頑張ろうぜ!

晨春会展はじまる

晨春会 ’25 展会場(2025.06.10)
斎藤由加「猫の芽」アルミ鋳金

晨春会(しんしゅんかい)展が始まりました。今年は星野、瀬川両氏が体調不良のため退会し、また、高橋千代子氏が逝去されました。一抹の寂しさを伴った展覧会になります。高橋氏には謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

そのかわり、元気いっぱいの彫刻・斎藤由加氏が新しくメンバーとして参加してくださいました。嬉しい限りです。晨春会展も今年で38年目を迎えます。最初は「5回続ければいい」と始めた展覧会が好評で、(メンバーも皆若かったし)勢いだけで20回まで突っ走ってしまったような気がします。20回を越え、これからどうするかをやっと考える段階になってから、またそろそろ20年。あっという間です。世代交代ももう一段スピードアップする必要があるかも知れません。

陳列終了後のメンバーの話題の中心は「腰痛」などの健康・病気に関すること。皆さんほぼ全員が本人か家族のどなたかにそういった問題を抱える年齢です。もちろんわたしも例外ではありません。そういったもろもろが作品に反映されるのも生きていればこそ。そこがAIで作る作品との違いでしょう。どうぞ皆様、実作品でご覧ください。