ルーベンス展を観た

ルーベンスの素描(部分)
ルーベンスの素描(部分)

 

昨日(4月21日)渋谷のbunkamuraでルーベンス展を観た。

今回は下塗りに注目した。板に描いた油彩による小さな素描などではそれがとても見やすかった。ルーベンスの下塗り(地塗りとは別)は通常の下塗りよりずっと薄く、明るく施してあるのを再発見。その上にやや濃い茶色でデッサン(下塗りが明るいからそれで十分な効果)をサラリと、しかし的確に(まるで鉛筆で描いたように)描く。写真のタッチを見てください。油彩でもこのタッチで描いてます!。次に白をハイライトに立体感を強め、それが乾いてからしっかりした色付けをする。制作にかかる時間、日数は極めて短時日だったに違いない。デッサン力を活かす、おそらく最適の方法ではないだろうか。

私たちの才能

つるこけもも 水彩 F6
つるこけもも 水彩 F6

サヴァン症候群という、かつては特殊な自閉症の一種と考えられていた、脳の機能障害がある。様々なケースがあるようだが、簡単に言えば見たままを写真のように記憶するという「症状」がよく知られている。

絵を描くための、形を正確に捉える訓練にほとんどの人が相当苦労する。私ももちろんその一人。そういう人たちから見れば、それは「障害」というより、羨ましいような「才能」に見える。ヘリコプターで上空から一目見たニューヨークや東京の風景を、大小の建物やその高さ、街路などをそのまま写真を見るように長大な紙にスラスラと描き出すことで超有名な、スティーブン・ウィルトシャーなどがその典型だ。日本の山下清もそうだったらしい。

ただ、彼らには新しい画材の工夫や、描画技術の向上というものは基本的に出来ないらしい。そのための理論的な理解や想像力といった、別の「脳力」が与えられていないからだと言われている。

正確なデッサン力も無く、色彩や明度の微妙な差を捉える才能に恵まれなくても大丈夫。観る人の99.9%はそのような私たちの仲間である。0.1%の眼力ある鑑賞者も、たぶん作者の表現しきれていないところまで深読みしてくれる、という楽観さこそ私たちの大いなる「才能」だから。

逆光の窓辺

 

逆光の窓辺 水彩 F6
逆光の窓辺 水彩 F6

逆光表現が最近特に好きになった。理由はよく解らないが、たぶん光がきらきら眩しい感じになるのが好きなのかも知れない。

お手軽な描き方。デッサンも30秒くらい。でも、絵にとって一番大事なのは画面から発散するイメージで、手間や材料ではない。でもお手軽に描けるようになるまでの膨大な訓練時間は、私には必要だった。