カプセルとしての Apple

制作中

Apple(シリーズ?)を展開した作品を現在制作中です。昨年と一昨年はAppleにまつわる、一種のノスタルジーをテーマにしたものでしたが、今回は「カプセルとしてのApple」をテーマにしてみようと思っています。

いま思い出してみると、学生時代に「囚われ」というP100号(※サイズの前のP,F,Mはキャンバスのかたちを示し、数字は規格のサイズを表しています。Pはやや細長い四角形です)の作品が、中に何かを閉じ込めた(閉じ込められた)、つまりカプセルを意識して描いた最初の大きな作品だったように思います。

学生時代は多くの人にとって、先の見えない不安と、自分だけではどうにもならない圧迫(閉じ込められ)感を感じやすい時期です。。たぶん今の学生さんでもそうでしょう(卒業して社会に出ると、慣れてくるというか麻痺してくる、鈍感になるのですが)。そういう意味では、ごく一般的なテーマだったとも言えます(もちろん表現は個々それぞれです)。
 その後もズバリ「カプセル」という題名で何枚も描いているし、それをテーマにした作品もたくさん発表してきました。「シェルターの男」という連作もあります。シェルターですから何かから「護る」のですが、これもひとつのカプセルと考えていいと思います。
 だから、ずっと継続しているテーマであるとも言えますよね。「閉じ込められる=閉塞感」と聞けばマイナスイメージですが、たとえば「種(たね)」という題名の絵も何枚か発表しています。それなどは、そこから発芽、成長するというプラスイメージを与えるでしょう。

この絵はこれから先どうなっていくでしょうか。同時に2点進行していますが、ここに掲げないもう一点は、いちおうプラスイメージになる予定です。この絵はどうなるでしょうか。勝手に想像してみてください。

イカロス

    「龍の棲む森へ行く」  テンペラ、エンコスティック

イカロスはギリシャ神話に登場する。太陽にあまりに近く飛び過ぎたため、翼をくっつけていた蝋(ロウ)が溶けて墜落した。ブリューゲルが海に落下した瞬間を描いているが、そこはたぶん大西洋だったのだろう。地中海ではなさそうな気がする。

以後、イカロスは現在まで生死不明である。「飛ぶ男」は、もしかしたら・・。

ハッチング

       「羽化」のための試作 2025 ミクストメディア
あまり目立たないようにハッチングしています

先日アップした「『羽化』のためのエスキース」を実際の絵の具を使って試作してみました。先日の「竜宮へ行く」を喜んでくれた方がいるので、調子に乗ってエンコスティックを使っています。同じミクストメディアという表示でも、今回はテンペラとエンコスティックのみ。アクリルは使いませんでした。

今回は「ハッチング」というテクニックを使ってみました(何となく網目状に線がクロスしている部分)。ハッチングという名称自体はよく知られていると思います。これは油絵のような自在なグラデーションができない時代の、「やむを得ない」テクニックです。現代ではデリケートなグラデーションなど小学生でもできますが、油絵発祥の地ヨーロッパでさえ、14世紀までは滑らかなグラデーションはできませんでした。「秘術」のレベルだったんです。その「秘術」を、「技術」で乗り越えようと発想したのが「ハッチング」です。

「技術史」的には大きな意味がありますが、アートに近い分野でだけに、「密度」を視覚化する特殊効果として、ぎりぎり生き残っています。一本一本の線は薄く描かれるので、線がはっきり見えてくるまでには、同じところを何度か重ねる必要があります。線そのものの技術も必要ですが、なにより手間かかるんですねー。

「ハッチング」はレオナルド・ダ・ヴィンチが生まれる直前、ファン・アイクが油絵技法を完成するまでの画家たちの「公式」テクニックでした。現代では誰もが、特に勉強しなくても、素材の方が勝手にやってくれます。だから?逆に効果もあるんですよね。