「初雪」を描く

「初雪(那須にて)」
現場写真

昨夜から今朝にかけて関東の山沿いにも初雪があったらしい。いよいよ当地は当地なりの「冬」の到来だ。那須岳(茶臼岳)を撮った写真があったので、初雪をテーマに描いてみました。実際この時も初雪だったように記憶しているが、確信はありません。

下が現場写真。車を路肩に寄せ、運転席から撮ったものだと思っていたら、どうやら誰かに載せてもらい、助手席から通りすがりに撮ったものらしい。たしかに(自分が撮るなら)写真の構図としても中途半端な位置取りだ。あえてこれを何とか絵にしてみることにした。

写真になくても道の想像はつくが、あえて道はぎりぎり入れないことにする。大きな変更は「電柱」の大きさと位置。電柱のサイズを小さくしたぶん、山が大きく感じられるような気がするのですが、どうでしょうか(実際、比率的にも大きくしてあるが)。左に(実際にもあるが)林の一部を追加して、視線が左から外に抜けてしまうのを防ぎます。

空と雪の明暗を逆転。雪の白さを強調しました。これで「初雪」がテーマであることがはっきり伝わると思います。山裾には意識的に赤味の色を加え、「秋の終わり感」を表現しています。ただ、山全体はもう少し軽く描いて、距離感を出した方が良かったかなあ、とも感じます。

暗い風景が苦手

バルーンフェスティバル(水彩)

先週土曜日のバルーンフェスティバルの様子を、一部変えて水彩に描いてみた。

一見単純な構図で簡単そうに見えたが、描いてみると意外に難しい。まず、画面を(クリアーな感じで)全体に暗くすること、つまり夜の感覚を描くことが技術的にも難しい。そして、いくら暗くても白い気球は白く見えなければならず、左の赤い気球は赤く見えなければならないという、「明度と色」の使い方など。

地面の明るい光やバーナーの燃焼の明るさなどが難しいのでは、と多くの人は想像するかもしれないが、それは実は大したことはない。むしろ、中央のバルーンの赤から青への色のストライプの彩度、気球のつなぎ目の線の表現など、単純だが色を識別する能力とそれを適正に描写する能力とのコンビネーションが要求される。小さい画面(F4)なのに3時間もかかってしまった。

これは油彩で描く方がずっと楽に描けそうだ。微妙なグラデーションのコントロールは、油彩の方が水彩よりはるかに合理的にできる。もう一つ考えたのは、黒い紙に色鉛筆で描くこと。これも制約はあるが、まあ、こちらも水彩よりは楽に描けそうな気がする。
 考えてみると、特に透明水彩は絵の具を薄く溶き、下地の紙の白さを生かすことで成り立つ技法なのだから、暗い風景が苦手なのは当然といってよい。だからといって、諦めていいというわけではない。描けばできるようになる、とも思う。

色の衝撃-ルミナスカラー

スキャンしたら黄色が消えてしまった

絵の具メーカーのホルベイン社から新発売の「ルミナスカラー」が出たというので、使ってみた。ルミナスというから蛍光色だはと思ったが、実際ホルベインのホームページにもそう出ている。蛍光色は水彩、アクリル、油絵具などにすでに使われていて、わたしもアクリル絵の具では何本か持っているが、水彩絵の具で使ったのは今回が初めて。久しぶりに色の衝撃を受けた。凄い発色、というか輝きに圧倒された。

上の絵の、カーテンの柱から右側の部分が主にルミナスカラーを使用、左側はほぼ従来の水彩絵の具で描いたものを、日なたでカメラ撮影した。明るいというより、それ自体が発光しているかのよう。窓の向こうが明るい、というより、むしろ窓からこちらに飛び出して見える。色が強い(彩度が高い)のである。テーブルの赤も、これまでの水彩絵の具ではできなかった発色。これを使えば、確かに表現が変わる、考え方も変わりそうだ。

下の絵は、それをスキャンしてみたもの。スキャンとカメラ撮影では条件が違うので一概に比べることはできないが、ルミナスカラーの部分が極端に色褪めしているのがわかる(左のテーブルにもルミナスカラーが少し使われている)。特に黄色は完全に消えてしまった。
 これは大きな問題だ。もし、画家が自分の作品を印刷・出版する場合はスキャン画像が重要になると思うけれど、その目的ではこの絵の具は使えないことになる(ただし、普通にカメラで撮る限りは問題ありません)。
 さらに、通常の絵画作品を制作する場合、制作から発表まで何年もかかることも珍しくない。どころかずっと保存したままになる作品の方が圧倒的に多い。その時問題になるのは「耐光性」。光に対してどれだけ色の保存力があるか、ということ。ルミナスカラーは全部で12色発売されているが、そのすべてが耐光性は「低い」。色が変化しやすいレベル。多くの画家にとっては、そこが心配だと思う。

ただし、(保存しない)一回だけの展示、目を引くことが狙いのポスターやイラスト、ポップなどにとっては、強力な武器になることは間違いない。そういう作品にはお勧めです。