Where it’s at 素敵な場所

「少年と犬ー冬」2002年 F100 テンペラ、糊、書道用紙など

素敵な場所は、今はどこにあるんでしょうか?目の前に、摘んできた野葡萄を置いた爽やかな高原のロッジ?渋いチェロのレコードが回っている、歴史ある街角の中のカフェ?静かに降る雪を見ながら暖かいミルクコーヒーを飲んでいるアトリエ?嵐の過ぎるのを待って寝そべっているテントの中?いつでも戻れると思っていたのに、いつの間にか、どれもとても遠く感じる場所になってしまった。

その場所はいつでもその場所にあり、友人たちもそこで楽しく宴を楽しんでいる。そこに自分もいる。そんな素敵な場所は今はどこにあるんでしょうか。

現実にそんな場所はいくらでもあり、その気にさえなれば誰でも(たぶん)行くことができる。そして、そこへ行けば、きっと想像以上のことが目の前で起こる。旅の面白さはそこに尽きる。ここ数年、旅らしい旅をしなくなった。途中で歩けなくなったらどうしよう、そんな心配が先にたって、旅に対して積極的な気持が持てなくなってしまった。東西南北どちらへでも、電車で1時間も乗れば、机の前の窓から見る風景と違うものを見ることはできる。そのうえ予想外のことは必ず起きる。それが分かっているのに出かけないなんてどうしちゃったんだろう。

脳ミソに無駄な脂肪がつき、足腰からその分の筋肉が無くなって、体重は差し引きが釣り合って “健康” 的だなんて。そんなものが一体何だというのだ。動物は動けなくなったら餌を摂ることはできず、死ぬしかない。動くことが動物だという単純過ぎる意味でウオーキングなどが奨励されているのではあるけれど、動くだけなら機械も空気も動いてはいる。まして、ただ歩くことが目的の動物などいるはずもない。
 素敵な場所はどこにあるのか。どうやったらそこに行けるのか、考える脳の足腰を鍛えるために、夢の中を歩く。

 

やさしい秋

ほんのりと、やさしい味のかぼちゃ。茹でただけ
写真を撮る前に食べてしまうところだった。デザートの梨までは手が届かなかった

やさしい味のかぼちゃができた。かぼちゃは年中よく食べる。こくこくしたもの、味付けしたかぼちゃ、少しべちゃっとしたものなど、産地や調理?の仕方などによって味わいはずいぶん変わる。どちらかというとわたしの好みはコクコク派だが、どれでもまあ、嫌いということはない。基本的にかぼちゃ好きである。

今回はあっさりした味で、なんにも手をかけていないという。その上にヨーグルトをかけて食べるつもりでいたそうだが、わたしはそのまま、かぼちゃだけで食べた。北海道産というわけでもないだろうが、これはコクコクしていない。味も濃い方ではないが、水っぽいというわけでもない。人によっては物足りない味かも知れないし、わたしもそんな気もしないではなかったが、適度な柔らかさと、ほんのりした甘さが、この夏の厳しい暑さに疲れ気味のわたしにぴったりきたのかもしれません。

暦の上ではとっくに秋なのに、気温はまだ真夏のまま。平年の最高気温が、今年の最低気温に近いのだから秋など感じられるはずもない。そうなのだが、スーパーへ行けば栗が出ている、トウモロコシも出ている、梨もサンマももう食べた。外を歩けば石榴が実をつけている。やっぱり季節は秋へ秋へと進んでいるのである。

美味しい秋、は普通だが、たまたまやや出来損ないの茹で方が、わたしに「やさしい秋」をもたらしてくれた。強さや激しさより、「適度」の良さがすこし分かってきたのかもしれません。

ポポー

ポポー。絵画教室のSさんから頂いた
冷やして、スプーンで直接食べた
手に持つと焼き芋にも見える?皮は焼き芋より薄い
「道の駅ー五霞」で売っていた!これは15センチサイズ

「ポポー」という果物を知っていますか?知っている人も少ないから、食べたことのある人はもっと少ないはず。知らないのも当然、 “幻のフルーツ” とも言われているのだそうです。その“幻” をわたしは3度目ですが、どんな味だったかすっかり忘れていました。絵画教室のSさんから自宅畑で作ったというのを頂きました。

なにより香りが独特です。この木の種類からは精油、香油を採取するというのも理解できます。言葉で表現しようとすると、あまり似たような例がないのでなかなか難しい。香りだけだとちょっと酸っぱいようなイメージが湧きますが、食べてみると酸味はあってもほんのわずか。適度な甘さの、ねっとりした濃厚な食感に、むしろちょっと驚きますよ。

原産地は北米東部。モクレン目バンレイシ科アシミナ属の木または蔓性の植物で、多くは亜熱帯~熱帯に生育する。ポポーのように温帯に育つものはごく少ない(6種)。バンレイシ科に属する植物の種類はものすごく多く(110属約2400種)、特に東南アジアではジャングルを構成する木の主要な要素となっている(以上ウィキペディアより)。
 日本には明治30年頃に観賞用として輸入され、昭和初期には栽培のしやすさから一大ブームになったと紹介されています(たぶん食用としても)。栽培の写真を見るとアケビのような実の付き方をします(実のかたちも似ていますね。そこからアケビガキと呼ぶ地方もあるそうです)。現在の代表的な産地は愛媛県と茨城県。確かに昨日(9/16)、茨城県五霞町の道の駅に行ったら売っていましたよ!!10パック近くも買っている人がいました。ちょっと食べ慣れない味ですが、そのぶん逆にハマる人もいるんでしょうね。
 ポップには「森のカスタードクリーム」とありました。わたしの食感でいえば、アボカドとプリンを混ぜたような感じ、あるいはマンゴーとプリンをミックスしたと言った方が近いと感じます。ポポーは北米原産ですが、食感は多くの仲間のように断然トロピカルフルーツ!栄養価もきっと高いと思います。

なぜこれが“幻” になったかというと、皮がとても薄くて柔らかく、傷みやすいからです。これはこの科に共通する特徴のようで、果実に触るだけで傷つき、簡単に皮がむけ、黒ずんでしまい、お店に並べる前に “美貌(ビボー)” が台無しになってしまうんですよね。そのため世界的にも輸出入は難しいそうですから、“幻” になったのは味のせいではなさそうです。
 アボカドがわたしは大好きですが、食べるようになったのは最近のこと。ずっと見ているだけで手を出しませんでした。あの、柔らかい石鹼を齧るような触感もはじめの頃は好きではなかったのに、あるとき、お寿司屋さんでアボカド巻きを食べたのをきっかけに好きになりました。ポポーも最初は半信半疑。1回目は、こんなものかな??。2回目は、ううん、好みが分かれそう、という感じでした。
 3回目は?まだ、大好きとまでは言えませんが、また、機会があればほかの食べ方もしてみようかなとは思いますね。本当は“スケッチの素材” としてくださったかもしれません。でも、かたちがシンプルすぎて、描くのはちょっと難しいと思っていました。弁解ですね。