CGスケッチ

Apple on the note  CG

CGスケッチ、という単語があるかどうかは知らないが、ごく最近のわたしはなるべくCGでスケッチするよう意識している。鉛筆が紙にこすれていく手触り感など、ひどく官能的でついそちらを使いたくなるが、ぐっと踏みとどまる。

スケッチだから目の前には対象物がある。紙のスケッチブックと同じように描いていく。ペンとかブラシとかの選択肢がめちゃくちゃ広いが、使うのが何となく手触り感のあるブラシに偏りがちなのは、普段から実物をつかっているせいだろう。わたしはこれを経験からくる利点と考えるが、ある人はそれは欠点だという。実作の経験がCGでの可能性を逆に狭める。なるほど。

タブレットは確かに多機能で、きわめて便利であるが、一番の難点は小さいこと。1mサイズで描きたいときでも、せいぜい20㎝程度の中で描くしかない。拡大すればいくらでも大きく描けるとうたわれているが、具体的なサイズの違いは身体の使い方からして全く別次元の問題だ。たとえば大きな画面では立って描く。そして腕を大きく使って描くが、タブレットではそんなことはあり得ない。

けれど、その難点?こそ、タブレットのタブレットたる所以であるのだから、わたしにとっては甘辛い。そのうえ、紙のスケッチではあとでそれを写真やスキャンしてパソコンに取り込み加工してきたが、CGスケッチではそれが同時進行である。ひと手間もふた手間も短い。しかも完全にデータ化され、どのような媒体にも横展開が容易である。したがって使わないという選択はもったいなさ過ぎる。—でもなあ、紙に描くのが気持ちいいなら、それがいいんじゃないか—1枚より100枚、1万枚の方がいいと考えるのは、その方が「知識化」されやすいからだろう。芸術の秘密は、知識化されることでかえって失われるものもあるんじゃないか—悪魔がいつも耳元で囁く。

アクセント

「ラウンジ(習作)」    水彩F10+CG

絵は、絵画教室のある施設の一部がモチーフ。屋根からの明り取りにつけたパーゴラが、下の円柱に投げかけた影のかたちの面白さをテーマに試作してみた。

「ン十年間ずっと努力し続ける」なんてことはやったこともないし、わたしにできるとも思わないが、世の中にはちゃんとやる人がいる(少なくとも伝記の類を読めば)。そういう人はたいてい(様々な意味で)偉い人になっている。続けるだけで立派だと思うのに、結果まで残しちゃって、素直にすごいなと思う。

アクセントという語は、語学用語では「強調」という意味でも使われる。わたしは「強調」がちょっと得意?かもしれない。地道な努力は続けられないが、ときどき気の利いた猫パンチをちょっと見せるってやつ。「お調子モン」というほど鋭い即興力はないが、遅れ気味に人を笑わせるくらいのゆるいジャブで。

「人生にもアクセントが必要だ」とどこかで聞いたことがあるような気がする。この場合のアクセントとは「ハイライト」に近い意味だろう。一生のうちに何度か自分が目立つ瞬間があるといいな、ということだと解釈している。なるほどそうかも、とも思うが、どうやったらそういう瞬間を持てるようになるかって考えると、やっぱり「ン十年間・・・」に戻ってしまう。語学ではアクセントと似た意味の語に「ストレス」というのがあり、同じく「強調」と訳されるが、これとアクセントと入れ替えると「人生にはストレスが必要だ」ということで、わたしのようなナマケモノには絶望しかなくなってしまう。

円柱に落ちたパーゴラの影は太陽の動きとともにかたちを変え、太陽が雲に隠れれば一瞬で消える。ハイライトであり、一瞬のアクセントであり、いつでも見られるわけではないというストレスがある。見る側の心にもドラマが生まれる。

夏夕立(なつゆだち)

Jangle girl (CG)

夕方のウオーキング中雨に降られ、びしょぬれになった。先月に続き、今年二度目のびしょぬれだ。二度ともなぜか白っぽいズボンを穿いているとき。ズボンが透けて、下着まで見えてしまう。女性だったら大変。こいつは夏用の薄い作業ズボン。汚れてもいい気楽なものだが、悪い運を背負ってしまったらしい。雨の上がった玄関前でそいつを脱ぎ、外のバケツに叩き込む。You! Fire! (おまえはお払い箱だ!)と宣告。トランプ前米大統領のように指を突き出して。そのあとは青空まで出た。

今朝の段階では、暑くなるが上空に寒気が入り込み不安定になる。ところによりにわか雨があるかも、という予報だった。ウオーキングの前、空を見上げると、暗い色の雲が広がっていた。

スマートフォンで雨雲レーダーを確認。1時間ごとの動きをモニターしてみると、雨雲はすでにほぼ通過していて、そのあとはしばらく雲はないことを確認して外に出た。歩き始めのぽつぽつもすぐに止み、涼しい風の中を2㎞ほど歩いて市街地をはずれた。田んぼ道にさしかかるころ、再びぽつぽつと落ちてきた。振り向くと嫌な感じの雲がおおきな絨毯のように広がっている。おまけにその中で稲妻が光っていやがる。しかし、単独の雲で、その周囲は雲が切れていた。

妖しい感じの雲なので、背景か何かに使えるかもと、写真を撮った。風が急に強まってきたが、頭上の雲はその一個だけ。風はさらに強まり(わたしは風が大好きだ)、涼しさを感じているうちに、雲は頭上を通り過ぎた。「もう雨の心配はない」と思った直後、ざあーっと音がして雨粒が急に大きくなった。田んぼの向こうが急に霞みはじめ、振り返ると市街地もぼんやりしたシルエットになるほどの雨の強さ。上にも黒い雲など無く、明るく白い、靄のような雲だけ。そんなとこからこれほどの雨が降ってくる?「狐の集団嫁入り?」なんて、この現象を表現しつつ、天気予報としては正解と認めてUターン。すでにシューズはぐじゅっぐじゅっと鼻を鳴らし、ズボンは透け始めていた。