
今週末予定されていたトランプ-プーチンのブダペストでの会談は中止になったらしい。中止の理由が笑ってしまう。トランプがプーチンに対して「これ以上騙されて恥をかかされるのは御免だ」。今頃気がついたんかい。まあ、気がついただけお利口じゃん、とヨーロッパが苦笑しつつ、内心ではそっと胸をなでおろしているようだ。
ウクライナのゼレンスキー大統領が(トマホーク供与を求めて)ワシントンへ行く予定はすでにメディアによって国際報道されていた(2025,10.17GMT)。ところが、その前日にトランプが秘密裏にプーチンと急遽電話会談し、「プーチンはウクライナへのトマホーク供与を望んでいない」とトランプ自身がSNSで発信。ゼレンスキー氏との会談はその次、という順序になった。
普通の頭脳を持っている人なら誰だって、この時点で、こりゃ少なくともゼレンスキー氏に対する嫌味、当てこすり以上の結果は出ないな、って思いますよね。しかもオルバン政権下のブダペストだ。これは、人間的にはひどい仕打ちで、一見親しそうな顔をして「お前とはもう付き合わない」というためにだけ、(忙しく、しかもいつどこで暗殺されるか分からない状況にある)相手を呼び出している感じがする。これが国際政治といわれれば、そうなのだろうか。
ゼレンスキー大統領は「お願いする」立場。そういうことが解ったうえでも、約束である以上ワシントンへお伺いに参上するしかなかったはず。ホワイトハウスでは「プーチンの意向に従え」とも聞こえかねない、トランプの怒号が聞こえたとウォールストリート・ジャーナル紙(米)が伝えている。「交渉」にすらならないだろうと、事前に悟っていたゼレンスキー氏だが、ひたすら「忍耐」するしかなかっただろう。だけど、頭は(少なくともトランプよりは)冴えている。ただちにヨーロッパ各国首脳のメッセージを引き出した。
けれど、“メッセージを引き出す” ことはできても、残念ながらそれはあくまで “メッセージ” 。ヨーロッパ各国(NATOも含め)も、それぞれ自国の優先事項を抱えている。
一方、ブダペストでトランプを手玉に取る目論見がパーになったプーチンは、逆にある意味で自分自身を解放できたのか、思いっきりウクライナの(幼稚園爆撃を含む)インフラに攻撃を加えた。ロシア系ブロガー曰く「市民も(将来的には)兵士になり得る」から。民族を根絶やしにする、ということか。
2年前までは「ウクライナ(で)の戦争」で、ロシア内の多くの共和国、モスクワ、サンクトペテルブルクでは、「戦争はどこか遠いところ」の話だったようだ。しかし、ウクライナの執拗な反撃に遭い、足元が揺らぎだしてきた。そしてやっといま、この戦争がウクライナのことだけではなく、自分たちロシア(人)の戦争だと気づき始めてきたようだ。「大男、総身に知恵が周りかね」という、もう死語になっていたはずの言葉が甦ってきた。