花に追われる

         「アジサイ」  ペン・水彩
     「芍薬」  ペン

蕾で買ってきた芍薬が開いてきた。5、6個ある蕾のうち2個がほぼ同時、次いでもう一個開いてきたが、スケッチしている時間がない(いいわけ。ぶらぶらしている時間はたくさんある)。

冬から早春にかけては野の花、たとえばホトケノザやオオイヌノフグリなどは、お店で売っている花よりわたしには好ましい。が、摘み取ってきて描くというにはちょっと小さすぎる。
 その点、桜をはじめ紫陽花(あじさい)、牡丹、芍薬、薔薇、藤、躑躅(つつじ)など春本番の花々はいずれも豪華絢爛。あちこちの家の庭、垣根にもわんさか増えてくる。中には絵を描きたくなるような庭や花もないではないが、声をかけるほどの勇気はない。

あるとき、通りすがりの家の窓下に、きれいな大輪の薔薇が道へはみ出すようにずらりと植えられていた。思わず足を止め携帯で写真を撮った。それをたまたま家の人がカーテン越しに見ていたのだろう。「あげましょうか」と声をかけてきた。辞退したが、ちょうど小さな鉢に挿し木?したのがあるから帰りに持っていって、という。きれいな薔薇だったが、なぜか一年で枯れてしまった。あそこの薔薇はきっと今もきれいに咲いているだろうと思う。

花を描く

        「アジサイ」  水彩

花は描くのには難しい素材だが、絵と言えば風景か花を連想するほど “王道” のモチーフだ。「雪月花」と言えば日本画の三大画題ということになっているが、雪も月も風景だから、いわゆる “静物” としては花はダントツの格付けということになろうか。
 ちなみに伝統的日本画において「人物画」は特別扱いで、「歴史画」の部類に含まれるようだ。この辺は近代以前のヨーロッパの考え方と似ているかも知れない。

「花は難しい画題」だと言ったが、花以外は簡単かと言えば、そんなことはまったくない。試しにジャガイモを1個描いてごらんと言われたら、泥んこを丸めたものと区別できるように描ける人は決して多くはないはずだ。蜜柑だって、黄色をぐるっと塗って黒い点をプチプチ打てばそれでいいというものじゃない。それは一つの記号、シンボルではあっても、絵ではない。

「絵ではない」と簡単に言ってしまったが、では「絵とは何なのか」ということになるが、それをここで言っても始まらない。とにかく、簡単なものなど一つもない、と言いたいだけのこと。正確さとか、手間暇のことではない。それも大変には違いないが、根気さえあれば何とかなる(AIなら30秒だが)。

簡単に絵を描く方法、5分で身に着く英会話、3分でできる簡単レシピetc..。3分でできるレシピはたぶんわたしにも役に立つが、あとの2つはたぶん役に立つことはないだろう。