都知事選投票日も「思考停止の日」

「いやなことは忘れても困らない」  水彩

今日は都知事選の投票日。期日前投票では前回を上回っているらしい。ということは当日の投票率が下がるということでもあるし、第一この暑さでは出かけることができない人も少なからずいるに違いない。なぜ電子投票ができないのか、そこにも今の日本の問題が顔を出している。

先週金曜日、銀座から青山へと画廊を回ってきた。銀座で都知事選の応援演説をしているところにぶつかり、ちょっとだけ立ち見した。関係者が、「通行の邪魔にならないように」と声を張り上げていたが、あえて通行人の多いところを選んで演説しているのだから、邪魔にならないわけがない。

選挙制度そのものをおちょくって見せる政党もあれば、ほぼ習慣のように立候補する個人もあったりするが、今回は現職+政権与党VS野党候補、それに話題の新人が絡むという、典型的な従来通りの舞台となっている。そこにこっそり食い込もうとする寄生虫集団が見え隠れ(今や堂々と、だが)する構図も変わらない。変わらないのか変えたくないのか判らないが、有権者としては何も考えたくないというのが本音なんでしょう。いや、もしかするとそれがメディアの姿勢によるものかもしれないけれど。

諦めでもなく、投げやりでもなく、無視するでもないが何も行動したくない、投票にも。そんな感じに見える。で、結局は何も変わらず。それが「安心・安全」と感じる人もいる。とはいえ、世界は一瞬の停止もないのだから、積極的な意思として「変えない」というのでもない限り、一周遅れ、二周遅れとなっていくのは当然だ。思考停止の結果である。
 もちろん、ただ流れに乗っていければそれでいいとも思わないが、思考停止を一種の脳死のようなものだとすれば、自分の身体が誰かに何かされてもどうすることもできない。それでいいんですか?と訊いても、考えたくないというのだろうけど。

風しだい

「グライダー日和」  水彩

グライダーはいったん飛び立てば、ある意味風次第ともいえる飛行機です。枯葉のように風まかせではなく、ちゃんとコントロールします。自然の風でサーフィンしているような感じでしょうか。

スマートでナチュラルでナイーブ。自然体な感じがカッコイイですね。無理やり、言葉的に人間に当てはめると「風来坊」とでも言えるんでしょうか、でもこちらはちっともカッコよく感じません。

人は自力で飛ぶことに憧れてきました。エンジンを発明し、その推力で短い翼でも飛べるようになり、もっと早く、もっと長く飛ぶことが目標になりました。そして、とうとう戦闘機を作りました。

グライダーもそれなりの規模で戦争に使われた例はあります。でも、結局その風来坊性が、グライダーを主役にはしませんでした。人間も、風来坊では(たぶん)戦争やあらゆる競争というものに勝てないでしょう。カッコ悪くても、それがいいところだとわたしは思うのですが。

中世の装飾写本展-上野・西洋美術館

西欧中世の装飾写本。Dのイニシャルが絵になっています
こんなに金が使ってある!
ミサのための楽譜。現代の楽譜の原型ですね

昨日(2024.6.30)、東京上野の国立西洋美術館で「西欧中世の装飾写本」の展覧会を観てきました。時間が無かったので、ササっとだけですが、鑑賞者も多くなく、ちょっとだけ高尚な気分を味わえる、お勧めの展覧会です。8月半ばまでやっていますので、暑くて何もしたくないようなときには「教養」がオイシイかも。写真撮影が自由なのも嬉しいです。

彩飾写本はこれまでにも西洋美術館ほかで何度か見たことがありますが、最近では久しぶりです。展示品の多くは、グーテンベルクが活版印刷を発明する2,3百年前のものです。紙からインク、筆、ペン、フォントまですべて各寺院、修道院による手作り、手描きの聖書、時禱書や典礼から、掲示する規則などの類まで、多くの書物、書類が遺っているようです。今でもたぶん、一部では伝承されているはずです。

紙はいわゆる「羊皮紙」。羊や牛の皮を薄く薄くなめして、向こう側が透けるほどです。インクはいろんな草木、骨などを燃やし、その炭に脂などを練り合わせて作ります。もちろん家畜の飼育から解体、紙つくり、筆やペンの製作まですべて自前です。ワインやチーズ生産などの農業から、法律、アートなどの文化インフラ、寺院建築から戦争のための武器生産まであらゆる経済産業、文化の土台が、教会やこうした修道院などの中で作られ、広められ、洗練されてきたんですね。ヨーロッパの文化の底辺はこうやって出来上がってきたんだなあ、ということの一端が感じられる展覧会です。

印刷関連デザインで、「モリスの法則」というのがあります。近代デザインで大きな足跡を残したウィリアム・モリスによる、美しいページレイアウトのための、本文と天地、ノドなどのアキとの分量比のことですが、モリス以前にも、あらゆる試みがなされていることがわかります。(写真はすべて会場でのスマートフォン撮影です)