刺繡糸

刺繡糸 ペン・水彩

「手すさび」という言葉はもう死語だろうか。暇つぶしの手遊び、というほどの意味だが、現代人にはもう暇などないのかもしれない。

スケッチの本領は、じつは描くことにではなく、「じっと見る」ことにある。いい加減なものは、じっと見られることに耐えられない。きちんと作られたもの、よく考えられたもの、多くの人に愛されたもの。そうしたものは、深く見られれば見られるほど、次第に、厳かにその真価を現してくる。その真価に目と手で触れること、それがスケッチだ。

スケッチを描く意味は、ただ形や色を写すことにはない。視線の先にあるものと繋がること。ペンと紙、眼と対象物が繋がって一つのループになること、それが描くということだ。ペンの先、線の先から、無数の見えない糸がさらにオーラのように延びて、モノの放つオーラとつながる。「見ることは愛すること」と誰かが言った。生きたスケッチとはそういうもの。

投稿者:

Takashi

Takashi の個人ブログ。絵のことだけでなく、日々思うこと、感じることを、思いつくままに書いています。このブログは3代目。はじめからだと20年を越えます。 2023年1月1日から、とりあえず奇数日に書くことだけ決めました。今後の方向性その他のことはぽつぽつ考えて行くつもりです。

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