繻子(しゅす)蘭 / Rattlesnake plantain

繻子蘭が咲きそうだ

本棚の上の可愛らしいつぼみビロードのような光沢のある黒い葉は繻子蘭初めは握りこぶしほどの大きさ、2〜300円の小さなビニールの鉢植えだったのに数年でずいぶん大きくなり棚からせり出してくるようになった

邪魔になり放り出そうかと思う頃になるとそれを見透かしたかのようになんとも可憐な蕾を膨らませるまさに色仕掛け乙女のような細く白い首に載せたほんのり赤みのある蕾やがて白い十字の花が静かに開くその下には﨟たけた黒繻子縦縞のあだな装い

植物の世話など殆どしない忙しいからただ見るだけ文字通りの「目をかける」=世話ならしていることになるかもしれないが窓際に直径5cmほどのサボテンが2個去年の夏から瀕死の状態でなんとか生きている捨てられた鉢をダメ元で持ってきたものだ暑さの中ですっかり干からびていたやつが今度は冬の寒気に中の水分が凍りかけている私は薄情にもせいぜい夜はビニール袋を一枚かけてやるだけなぜか繻子蘭と同じところには置いてやらないのだ

死ぬか生きるか水分と保温のギリギリ最低限だけを与えて結果を観察している自分が何様のつもりかはしらないけれど

体験が大事 / Experience is first

立派な氷赤はシクラメンの花びら

全国をすっぽり覆う寒波が続いている今回の寒波はこれまでとはレベルが一段違う関東では21日に降った雪の量が記録的なものだっただけでなく雪質も(関東の)スキー場並みのものだった降っている時これはちょっとすごいぞと感じていた

その上続く寒波で連日の晴天にもかかわらず日陰ではその雪が硬く固まるばかりで一向に融けてしまわない大雪からまる一週間経った今日外の水道は蛇口付近を熱湯で暖めてもまだ一滴も水が出ないその下に置いてあったバケツの氷(写真)測ってみると厚さが17cmに近い埼玉移住36年自宅でこんな厚い氷は見たことがない

地球温暖化この一世紀だけのデータからはそんな気持ちにもなるが地球の歴史全体を身体全部に置き換えたならまだまつげの先端を見ている程度に過ぎない科学は素晴らしい成果を示していて今後もそれ以外に信じるに足るものはないだろうけれどそれでもまだ発展途上人類が通過した「経験」を部分的に確認している段階だ

命の危険災害の予感それはまだ科学ではないが人類の(動物の?)直感としてDNAとして刻み込まれている(筈だ)まずはそれを大事にするそしてその僅かな経験を大事に積み重ねる固執するのではなく少しだけ優先する

 

 

冬が来れば思い出す

オジロワシ舞う

「夏が来れば思い出す」ではないが冬が来れば思い出すことも少なくない

雪上に点々と続く動物や鳥の足跡空から激突するようにドスンと体をぶつけて着地する雉(キジ)の丸い胴体のあとドタドタした駆け足(滑走)飛び立ちの瞬間やっと浮いた体重の下を微かに羽根の先が雪を掻いた痕跡

立ち止まり何か考えるように小さく回りまた歩き出す一本の点線脚を踏み出すたびに深い雪をほんの少し引っかけるそれが転がって微かな線を残す柔らかな窪みはそこで狐が束の間の休息を得たことを示している小さな動物が雪に半分埋まりながらうねるように歩くそれらのイメージを半分は動物になって追体験してみるのが冬の愉しみの一つ葉を落とした灌木の茂みの中に野生の梨が鳥たちに見つからず残っていたりするそれは天からのご馳走だ