絵画教室の人々- 4

「微風」(部分)水彩

先輩がある展覧会で受賞したみたいですすっごーい!なんて思ってクラスのお友達数人と見に行った

これ?…すっごーい下手くそな作品ばかりの中先輩の絵の横になんとか賞と書かれた金色の札が下がっていた喜んでいいの?賞など蹴っ飛ばせばいいのにと思うくらいにまわりの絵がひどかったあの中で賞をもらって嬉しいかなーなんて思ったが会場で会った先輩の顔が光り輝いていたから全員で「おっめでとー!」としか言えなかった

次のクラスの時あらためておめでとうをいう前に先輩が唇の前に指を立てただから私達も何も言わなかった。lakini、そのことが私には先輩の受賞そのものより嬉しかった

だってあの中で賞を貰って舞い上がってたりしたらちょっとがっかりだったものさすが先輩。I、すっかり見直しちゃった

lakini、先輩の絵のどこがいいのかわたし本当は良くわかんないんです

絵画教室の人々−2

野の草 水彩
野の草 水彩

※これは架空のお話実在の人物とは何の関係もありません

ある日先生が薔薇を画題にと持ってきた花を見るのは好きだが描くのはどうも苦手だ何より棘があるのが気に入らないちくちくと痛そうで腕も筆も動かなくなる

先生は別に薔薇を描かなくてもいいとは言うが他に何のアイデアも無いので薔薇を描くより道はない…ところがところがである今日に限って何だか上手く描けるじゃない?ふふっだてに長年やってるわけじゃないって実力がついに…!思わず鼻歌が出そうになるのをこらえつつ夢中になって描いてしまったふう程よい疲れってこれよね

次回まで花は咲いていてくれないから一気に描けるところまで描くのが花を描くコツ腕まくりをして思わず前のめりになった時「あれー?それ私のキャンバスー」スの音がスーッと伸びた椅子の後ろに私のニューキャンバスが純白の美しさを放っていた…

 

絵画教室の人々−1

ウィリアム・ブレイク 憐れみ 水彩
ウィリアム・ブレイク 憐れみ 水彩

※これは架空のお話実在の人物とは何の関係もありません誰かに似ていても怒らないで

私は絵が好きです子どもの頃は「上手ね」とかおだてられて褒められたさに一生懸命描いたのが懐かしい学校の先生が校外展に出してくれて賞状なんかもたくさん貰ったのに学年が上になるとなんだか絵を描いているだけで周囲から白い目を感じるようになった本とノートを開いているだけで親が喜ぶのが分かるようになっていつの間にか絵を描かなくなっちゃった…そして絵のことを忘れてしまっていた

ン十年経ってふと思ったんだ「お前はわがままな子だ」とか親類にも言われそんな気もして肩を細くしてたけど本当はわがままどころかやりたいことを我慢して生きてきたのかも知れないなあって私っていつも気がつくのが人より遅いんです

ゲージュツの道は険しく遠い(らしい)その長〜い道程から見れば先生も私たちも大した違いはないだろうが隣の席にちょっと先生が筆を入れると急になんだかよく見えてしまうもう先生の絵に洗脳されちゃっているのかなベテランはその辺がわかってらっしゃるのか「先生これちょっと良いでしょう?」と挑戦的に見せる本当に満足しているのか「手出し無用」とバリアを張っているのかは新人では窺い知れぬ奥深さ

私などこうはいかぬ先生の顔を見るなりなぜか謝ってしまう「済みません全然思うように描けなくって」思う通りに描ければ教室になど通わないと頭の中とまるっきり正反対のことを口が勝手に喋ってしまう自分の口ながらコントロールできず口の代わりに手が勝手に絵を描いてくれれば嬉しいのだがどうも自分の手は筆(と包丁と掃除機アンド洗濯機)に触るのは遺伝的に苦手らしいのだそれは私のせいではない