
テンペラをやり直しながら、ふと思い出した。かの油彩画の巨匠ルーベンスは白亜地(ジンクホワイトを膠で塗った下地。吸水性がある)に、初めは卵メディウムとグラッシで、つまり殆どテンペラの混合技法で下描きを施し、その上を油彩で仕上げたということ。ルーベンスの絵は同時代の他の画家より、たとえば黒にしても一段深く、他の画家の黒が灰色に見えるほど引き締まっている。その違いはどうもこの卵メディウムと透明な油の層(これをグラッシという)、水と油の使い分けに秘密が在りそうだということだった。
水彩のような感覚的な画材と違い、油彩は一種化学的、実証的な側面がずっと大きい。画材の性質をよく呑み込んで使えば、狙い通りの効果になることを証明しているのがルーベンスだ。Але、一方ではそれに反するような使い方が、結果的に成功の鍵となっている絵も少なくない。気合いで成功させてしまう絵と言えばいいのだろうか。気合だけではまともな絵は描けないと思う。が、気合いが無いと絵が生きてこないというのも確かではないか?20年以上前も、そんなことを考えていたのを思い出した。
強大な台風6号(久々に元気な台風だ)の影響の雨が朝から断続的に降っていたが今は止み、涼しい風が入ってきた(埼玉県にも土砂災害の警報が出始めた)。明日は台風が来そうだ。 2011/7/20 1:15am