
大学時代の同級生からメールが来た。展覧会を見に来るつもりだ、という。なぜだか急にうろたえる。「ヤバい、もうちょっとまともな絵を出さなくっちゃ」。ale、展覧会の一つは明後日からで、もう出品しちゃったし、もう一つだって来週月曜日から始まる。いくらジタバタしてももう遅い。
考えてみると、学生時代から私は絵を描いていたのだが、ほとんど友人たちに見せることはなかった。決して隠したり、隠れて描いたりしていたわけではないが、話題にならなかっただけなのだと思う。卒業、就職、そして多くの同級生たちがそれなりに地位や、あとに残せる資産などを作って退職するようになって、いまだに就職もせず(できず)、地位もなく、資産にいたっては就職1年生にも及ばないというオロカモノはどうしているのか、40年以上もバカの一つ覚えに描き続けている絵というのがどの程度のものなのか、気にかけてくれているのかも知れない、と思う。
たしかに、就職もせず、美大に行ったわけでもなく、ただ単に好きだというそれだけで、40年以上生きてこられたことは自分でも不思議な気もする。多分役に立たないモノ好きも、何人かは世の中にいても悪くはない、と社会が受け入れてくれたからだろう。特に努力もしなかったから、なおさらそうだとしか思えない。それなら、今さらジタバタしなくてもいいかも、とすぐ自分に都合のいいように考える。これが40年の成果です、と胸を張っては言えないが、人の物を盗んで見せるわけではないから、「これだよ」と聞こえないような小さな声で言おうと思う。