
絵には実際に現物を見なければ分からないところがたくさんある。另一方面、近くで現物を見ることで、かえって見えなくなるものもある。
写真や印刷物では見えないものは細部。例如、遠くから一様にぬられているようにみえる油絵の、間近でしか見えない筆の動き。右から左から、その早さなど。ロープなどで絵から離れて鑑賞するよう制限する展覧会もある。作品保護の観点からは仕方ない面もあるが、そこを見たい人、そこが見える人にとってはじれったい仕打でもある。
そうやって現物を見るとき、逆に見えなくなるのは、作者の意図のようなもの。近く見ると作者の目や身体の動きがアクティブ過ぎて、冷静な計算が見えなくなる。大げさな身振りの陰に隠された、ち密な配置など。これは画集などで何度も見返しているうちに「もしかしたら」見えてくる。作者の軽い “めまい” も。
絵とは何が描いてあるのかを見るものではない。それを描いた「作者」や「作者の感覚」を見るものだ。