
85歳の叔母がペースメーカの埋め込み手術をしてから今日で4日目。むつ市まで見舞いに行く峠の道で、路上に横たわる黄色のものを通り過ぎた。「黄貂だ」。中学生の頃、私も何度かわなで捕獲したことがあったので、すぐピンと来た。
カーブの坂道に沿って車をバック。肉付きのしっかりした、まだ若い個体だ。しかも車に撥ねられた直後らしく、まだ体は生暖かい。どこからも血も体液も流れていない。脳震盪程度であればいいと願ったが、残念ながら瞳孔が開いていた。
貂(てん)はイタチ科テン属の肉食動物。茶色や黒の毛色のものが多いが、下北産の黄貂は特に冬は非常に美しい黄色で知られ、かつては高値で取引された。この黄貂はまだ成長途中で、しかも夏毛だからそれほどには見えないが、黄色の根元の毛は白かったので、成長したらきっと美しい冬毛になったに違いない。数十年ぶりにみる野生の黄貂だった。
野生動物の保護は今では世界の趨勢。私も再び捕らえたいなどとは思わない。но、もう一度、降りしきる雪の中で、野生のあの美しい黄色を見たいとは思う。誰かが拾ったか、鳥か動物が咥えていったか、帰り道にもう姿はなかった。