
10年も通ってきている女性がいる。彼女は夫に先立たれ、今は一人で暮らしている。家には誰もいないから、夜は誰とも話さない。もちろん周りに人は住んでいて、日常のあいさつ程度はするだろうが、絵の話などする相手ではない。講座に通って、共通の趣味の人と少し深い話が出来る喜び。それが無くなると寂しい、と彼女は言った。
Но、個人的にはもう講座は無くなるものと考えている。私自身にとっては経済的なことやスペースの問題などいろいろ悩ましいことがあるけれど、或る意味で清々すると言えないこともない。
絵画講座はプロの養成所とは違う。技術的なアドバイスを通して、一歩深い世界を垣間見、豊かな趣味のすそ野を広げてもらうことが理想だと思う。その際大切なのは、講師の能力よりお互いの信頼関係だとも思ってきた。Но、これまでいろんなことがあり、そうした信頼関係にも方々でひびが入り始めている。私にとっては講座の廃止より、そちらの方が何倍も気が重い。内容自体は個人教室ででも代替できるが、気持ちの方はそう簡単には割り切れないからだ。
廃止までどうなるか、廃止以後をどうするか。もっとクールで、もっとリアルな頭が必要だが、残念ながらその能力は徹底的に欠けているらしい。