肉を喰わない犬がいた。
それは骨を喰う犬である、というより骨しか喰ったことのない犬である。
本来、犬は肉が大好きな動物である。骨と肉を一緒に食べることはあっても、肉を措いて骨だけ食べる犬はいない。
この犬は、貧しく、肉を喰ったことがないのである。わずかに干からびた肉のこびりついた骨が、この犬の最大のごちそうであった。かすかな肉の匂いと、歯にこすれ、唾液に溶けだした薄い肉の味のする骨が、この犬の大好物であった。
時々は、すこし多めに肉がこびりついていることもあり、そんな時犬は躍り上がって喜んだ。「なんてうまい骨なんだ!今日はついてるぞ」。普段は、骨にすらありつけない犬は、乾ききった、パサパサの骨ですら、見つけるたびにしゃぶるように、惜しみながら喰うのだった。
長い時間が過ぎたある日、肉の塊が犬の目の前に落ちていた。肉屋が紙に包んでくれた肉を袋に入れたおばあさんは、その袋に穴があいているのに気がつかなかったのだ。 「これは何だろう?随分うまそうなにおいがするが、食べたことのないものだ。こんなものを食べて腹を壊したら大変だ。この間も腐りかけた残飯を食べてひどい目にあったからな」。
ಆದರೆ、目の前の新鮮な肉からは、とてもいい匂いがする。犬は思わず叫んだ。「ああっ!これが骨だったらなあ!」
犬は誘惑から逃れるように、急いで走り去った。
魚を喰わない猫がいた。ホウレン草が好きで、なぜか、特にその赤い根の部分が大好きである。奥さんが買ってきたまま台所に置いてある、まだビニールの袋に入ったままのホウレン草を見つけると、喉を鳴らしながら顔をすり寄せ、体をくねらせながらホウレン草の匂いを楽しむのだった。
やがて鋭い爪で袋を破り、ホウレン草を引っ張り出す。好物の赤い根を横に咥えながら、シャリシャリと齧り始める。
奥さまは、ホウレン草のおひたしが大好きである。
久しぶりに、ちょっとお話を作ってみました。 2011/5/9