Sさんの水彩スケッチは、難しい対象を選んでしまったかもしれない。モチーフの実物も見せてもらったが、ほぼこの通りだった。微妙な色のグラデーションで、そのうえややドローンとした図柄。ひとことで言えばちょっとデザインが良くないのだが、それはSさんのせいではない。しかも描くために選んだのではなく、必要で買ったものを描いたまでのこと。よく描いてある。このような素材を、時間を括りだしてはコツコツと自らの練習台にしている。継続は力なり、をかならず体験するはずだ。 Tさんのスケッチには、子どもの絵のような楽しさがある。本人的にはともかく、一見遠近法を無視したような描き方が、そんな感じを強く引き出している。透視図法的な感覚がしっかり身についていないせいもあるが、仮にきちんと正確な図法で描かれたら、この面白さ(不思議な空間体験と言えばいいんだろうか?)がもっと出るかと言えば、たぶん真逆だろう。絵画の奥深さはじつはこういうところにある、আমি মনে করি。